
介護保険を参院選の争点に!
本書は、昨年9月16日に行われた8時間のマラソンシンポの記録(https://wan.or.jp/article/show/11320)に基づいて編集したブックレットです。介護保険のスタートから四半世紀。改定のたびに後退を強いられてきた歴史を総点検し、私たちが望む介護保険を展望しています。
ヘルパーやケアマネの深刻な人手不足、2024年春に強行された訪問介護の報酬削減による事業所閉鎖、事業所ゼロ(あるいは残り一つ)の自治体の急増、要介護認定の使いにくさ、施設における人員配置基準の「緩和」、財源の問題etc.……。介護保険はまさに「崖っぷち」に追い込まれており、このままでは、制度はあっても介護を受けられない保険「詐欺」になりかねません。
本書には、介護保険の成立に関わった官僚や市民運動団体(「高齢社会をよくする女性の会」)メンバー、事業者、利用者家族、自治体首長、研究者、ジャーナリストらが結集し、介護保険をさまざまな観点から論じ尽くしています。
また、コラムとして、昨年の衆院選にあたって「ケア社会をつくる会」が実施した政党アンケート結果も掲載しました。7月の参院選に向けても同様のアンケートを実施し、その結果は5月28日の院内集会で報告したのですが(https://wan.or.jp/article/show/11854)、昨年と今年の結果を比較すると、衆議院で過半数を失った与党が弱気になっていることが一目瞭然です。逆に、昨年のアンケートのほうが各党の「地金」が出ていると言えるでしょう。
介護保険はさまざまな問題(欠陥?)を抱えつつ、四半世紀のあいだに私たちの暮らしになくてはならないものになりました。介護保険は高齢者だけのものではありません。いま、あなたが親の介護をしながら仕事を続けることができているとしたら、それは介護保険のおかげです。ですが、このままでは、将来あなたが介護が必要になったとき、介護保険を利用することはできないかもしれません。
介護保険は、超高齢社会日本の最重要課題です。参院選にあたり、ぜひ本書をご一読ください。
◇目次
はじめに……………上野千鶴子
第Ⅰ部 こんなはずじゃなかった 制度編
1 介護保険制度、その歴史的意義(香取照幸)
2 介護保険の創設と「高齢社会をよくする女性の会」が果たした役割(袖井孝子)
3 社会保障の新自由主義的改革としての介護保険制度(山根純佳)
4 いじめ抜かれた介護保険――その「黒歴史」をたどる(服部万里子)
5 究極の財源問題――税・保険折衷方式は正しかったのか?(権丈善一)
6 介護保険制度の功罪(小竹雅子)
7 要介護認定の欠陥(田部井康夫)
8 ケアマネジャーのジレンマ(奥田龍人)
【コラム】介護保険・誕生物語(大熊由紀子)
第Ⅱ部 こんなはずじゃなかった 現場編
9 「崖っぷち」からケアの原点に立ち戻る(柳本文貴)
10 在宅介護の最後は介護心中?――使いたいときに使えない介護サービス(金子裕美子)
11 「大量廃止」で町から消える訪問介護(本田祐典)
12 地域でケアを続けていくために(石井英寿)
13 多職種連携と報酬の問題(菅原由美)
14 人間らしい職場で人間らしい介護を(坂野悠己・高口光子)
第Ⅲ部 こんなはずじゃなかった 展望編
15 地方分権・住民自治としての介護保険(岸本聡子)
16 ケアのニーズと財政問題(高端正幸)
17 介護職員が誇りを持って働くために(小川恵・新倉順・宮野大)
18 障害者福祉から考える介護保険との連携(岡部耕典)
19 労働の視点から見た介護保険制度(竹信三恵子)
【コラム】政党は介護保険をどう見ているか(石田路子)
おわりに……………樋口恵子
巻末資料
◆書誌データ
書名:介護保険は崖っぷち――私たちのケア社会をつくるには(岩波ブックレット)
著者:上野千鶴子・樋口恵子・ケア社会をつくる会編
頁数:112頁
刊行日:2025/06/27
定価:828円
出版社:岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/book/b10135035.html
慰安婦
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