ポジショナリティから男性の権力を考える

 このたび『ポジショナリティとジェンダー――女子教育と男性権力』と『ポジショナリティと<日沖関係>――沖縄と日本の権力構造、集団的利害と責任の様態を問い直す』の2冊を同時に上梓した。それぞれポジショナリティという視点から、性差をめぐる諸問題、日本と沖縄との関係について論じたものである。また本書に先だって、『ポジショナリティ――射程と社会学的系譜』(勁草書房、2023年)にて、ポジショナリティを一般化した議論を行ったが、本書はより現実の社会的事象からポジショナリティの諸問題を検討する意図で書かれている。
 ところで、本書の副題は「女子教育と男性権力」となっているが、教育社会学的な内容ではない。本書の意図は、性差において潜在している男性の権力を、ポジショナリティという視点を通じて明らかにすることにある。その際に、もっとも男性権力がわかりやすい形で現れる場のひとつが女子教育ということである。本書では、私自身の女子教育の場における経験と、女子教育に対する男性たちの言説を往復しつつ検討し、そこに現れる機序を、より一般化して男性の女性に対する権力作用として再構成するという手法を用いている。
 その過程で、男性によっては語られることが少ない、男性であることによる集団的利益の分配を検討する。さらにその分配の事実をごまかそうとする論理についても検討する。それらは、女性たちのジェンダーへの距離感や態度、構造化されたハビトゥスへの管理という形で現れる。それを「ジェンダー・アティチュード」と名づけて、ポジショナリティの非対称性の典型として分析する。そのなかで男性学言説やモノガミー、《ファルス》やリスクといった、社会学・ジェンダー論の諸概念も再検討する。
 ジェンダー領域におけるポジショナリティ概念は、複雑にみえる権力作用を切り分けて考えること、ポジショナリティを曖昧にすることによって集団的利害が隠蔽される機序やその諸相、ポジショナリティを無視したコミュニケーションがもたらす相互作用の諸相、被抑圧者にポジショナリティを忘却させて顕在化させない手法、といった諸点を検討する際に有効性を発揮する。本書は、ジェンダー領域の諸概念やさまざまな事象・言説を、ポジショナリティという軸から再編成して、「語られない権力」としての男性の存在様態を論じる。女性はもちろん、男性も変化しうる契機を提供できればとの想いからである。

◆書誌データ
書名 :『ポジショナリティとジェンダー――女子教育と男性権力』
著者 :池田 緑
頁数 :428頁
刊行日:2025/11/30
出版社:明石書店
定価 :3740円(税込)

ポジショナリティとジェンダー――女子教育と男性権力

著者:池田 緑

明石書店( 2026/01/09 )