
極端な市場主義者が世界を壊す
「破壊系資本主義」――聞き慣れない言葉ですよね。それも当然。これは、新自由主義研究で知られる若き歴史学者で本書の著者であるクィン・スロボディアンの造語です。地球や社会を「粉々に破壊(crack-up)」しながら進んでいく資本主義の一形態のことです。
実は、この活動には先導者がいます。イーロン・マスクやピーター・ティールなど「リバタリアン」と呼ばれる大富豪、ミルトン・フリードマンをはじめとする新自由主義の経済学者、多国籍企業、石油による富で世界的に影響力を強めつつあるアラブの豪族たち……。
彼らが目指すのは、民主主義なき資本主義の世界。そして、その過程で世界に拡大しているのが、特殊領域の「ゾーン」です。代表例は、主として開発途上国に設置され、低税率、低賃金、ゆるい労働法などを特徴とする「輸出加工区(EPZ)」。ここでは先進国の市民が着る服や靴などさまざまな製品が作られますが、安い賃金で酷使される現地の労働者は主に女性です。
本書は、既存の国家を否定して民主主義のない新たな世界を構築しようと突き進む人々の活動を描いたものです。ゾーンの増殖が象徴する過去40年間の世界の変化は、今私たちが目にしている排外主義や格差拡大、政治的混乱の背景でもあります。世界各地で進行する極端な資本主義の恐ろしい社会実験の現場をご覧ください。
◆目次
はじめに 崩れ去る世界地図
I 小さな島々の物語
1 世界にもっと香港を
2 ロンドン――美しき廃墟
3 シンガポール方式
II 部族(フュレー)化する世界
4 リバタリアン流のバントゥースタン
5 素晴らしき「国家の死」
6 米国――「新たな中世」のコスプレ族
7 株式会社リヒテンシュタイン
III フランチャイズ国家
8 ソマリ白人のビジネス族
9 ドバイ――法律のバブルドーム
10 ホンジュラス――シリコンバレーの植民計画
11 メタバースのクラウド国
結論 水になれ
謝辞/索引/原注
◆書誌データ
書名:破壊系資本主義――民主主義から脱出するリバタリアンたち
著者:クィン・スロボディアン
訳者:松島聖子
頁数:360頁
刊行日:2026/1/16(電子版:2026/1/28)
出版社:みすず書房
定価:3960円(税込)










