2015.05.27 Wed
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.わずか13歳のベルリンの少女がヘロイン中毒になり、体まで売る――。
そんな衝撃的な内容の映画『クリスチーネF~麻薬と売春の日々』を、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。1981年のドイツ映画で、日本でも当時、大センセーションを巻き起こしました。
原作になった手記『われら動物園駅の子どもたち』(邦訳『かなしみのクリスチアーネ~ある非行少女の告白』読売新聞社)は、ドイツではたちまちミリオンセラーになり、現在でも学校の副読本として使用されています。
本書はその続編です。35年たった今、51歳のクリスチアーネが、瀕死の重病に喘ぎながら今日までの凄絶な人生を語りました。
家庭が崩壊し、麻薬に逃げこむしかなかった少女時代。依存症との果てしなき戦いの末、やっと手にしたわが子との幸せ。それも束の間、行政当局によって息子を取り上げられてからの暗黒の日々……。
本書の中でクリスチアーネは、何度ヘロインから逃れようとしても、いつも仲間のところに戻ってしまいます。それは、幼い時に十分な幸福感が味わえなかったので、自分も、他人も、信頼することができないからです。信じることができなければ、独りで人生に立ち向かう強さも持てません。
幼い頃の家庭が、人間形成にとっていかに大切か。そして、一度道を踏み外した子どもたちを受け入れてやれる社会体制がいかに重要か。麻薬に全人生を翻弄されたクリスチアーネの言葉だからこそ、それが切ないほど重く伝わってきます。
日本でも中高生の薬物使用が問題化している今、ぜひとも多くの人に読んでいただきたい一冊です。
ところでクリスチアーネは一時、盛んに音楽活動を行っていて、80年代の西ドイツのロック、いわゆるノイエ・ドイチェ・ヴェレのスターたちと交流がありました。またボウイ・ファンの彼女のために『クリスチーネF』に自ら出演したデイヴィッド・ボウイとの後日談も書かれてあり、音楽好きにとっても本書は必読の書と言えそうです。(訳者 阿部寿美代)
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