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映画評:『マイレージ、マイライフ』  濱野千尋

2010.05.08 Sat

 ライアンは年間322日出張するビジネスマン。楽しみは飛行機利用で貯まるマイレージのポイント。束縛されない気ままな生活を愛す彼が、ある女性と出会い人生の重みに気づく。本年度ゴールデン・グローブ賞最優秀脚本賞受賞。 現在のアメリカが抱えるリストラという社会問題を暗くなりすぎず描き込んだ点が、本国で大絶賛されている理由だろうか?

 ひとりの気ままな根なし草生活を愛する中年ビジネスマンが、面識もないリストラ対象者に次々とクビを宣告しながらアメリカ中を飛行機で移動するというストーリーは、なんだか現代の毒入りファンタジーみたいだ。

 孤独感や職業の重み、人間関係の希薄さなど、現代的なキーワードがたくさん透けて見えてくる。確かにウェルメイドなお話なのだが、いかんせん要素が多すぎて、納得させるに足る大きなテーマには行きつけなかった感も。

 主演のジョージ・クルーニーは、エロい時は鼻の下を本当に伸ばし、悲しい時は額の皺をさらに深くする表現力で飽きさせない。デカくて器用なあの顔にしかできない芸当だ。ストーリーは消化不良気味だったけど、ジョージ・クルーニーの顔には絶大なる説得力が備わっていた。

初出:「新潮45」2010年4月号

編集局から:
「マイレージ、マイライフ」の公式HPはこちらからどうぞ

カテゴリー:新作映画評・エッセイ

タグ:仕事・雇用 / 映画 / ワークライフ・バランス / アメリカ映画 / 濱野千尋 / ヒューマンドラマ