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ひこ・田中さんの、「子どもの本イチオシ」が始まりました!

2011.06.06 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.wanの本屋、b-wan本棚に、ひこ・田中さんの「子どもの本イチオシ」コーナーが登場です。

ひこ・田中さんといえば、映画にもなった『お引越し』などで多くの読者を虜にした文学者。

ご自身の著書のなかで、大人たちに児童文学を紹介するなど、作品の執筆ほか、児童文学作品一般への造詣も深いひこ・田中さんの本棚が、今後どのように広がっていくのか。ひこ・田中さんご自身の推薦文も合わせてお楽しみください。

なお、「ひこ・田中の、子どもの本イチオシ」コーナーは、b-wanトップページの下半分にある、ピンクの付箋からご覧ください。本棚の中に並んだ各本の下にある、この本のデータを読むをクリックしていただければ、ひこ・田中さんのイチオシ文を読むことができます。

(b-wan 店長)。

以下、新しい本棚を記念して、ひこ・田中さんご自身からエッセイが届いております。

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アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.子どもの頃『若草物語』(1868)を読まれた方も多いと思います。未だに数種類の訳書が出版されていることから、今でも読まれているのも分かります。

私のおすすめは、『若草物語』の再読です。つまり、大人になった目でもう一度読み直してみませんか? 印象はどう違うでしょうか? 関心はどこに移っているでしょうか?

本書は出版年のクリスマスシーズン、夫が妻や娘に贈る最良の書物といった書評を得てベストセラーになり、その反響を受けてオルコットは約半年後に続編を出版し、これもヒットします。一作目の『Little Women』と二作目の『Good Wives』。一般的にはこの二作を合わせて一つの物語と考えられており、映画も二作目までを描きます。

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この物語が興味深いのは、当時の書評家が絶賛したように夫(父親)にとって都合の良い内容に見えつつ、同時にそうではないようにも読み取れる点です。

確かに語られている部分で夫(父親)は大絶賛されているのですが、物語全体で彼の占める位置はどうかと言えば、ほとんど必要とされていないのです。

実際に登場するのは『Little Women』では最終章の数ページと『Good Wives』の最初の数ページだけ。夫(父親)はそれだけで退場させられ、後は母親と四姉妹(三女ベスは『Little Women』で亡くなりますが)を巡る物語となっています。夫(父親)以外の男たちも登場しますが、裕福ですが孤独な老人、虚弱な少年、後ろ盾のない孤児の青年、知識人だが移民でとても貧しい男といった面々で、力を誇示することはありませんし、出来ないように注意深く配置されています。

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.作者がどのように考えていたのかはともかく、この物語はいくつもの解釈が可能です。そして幸いなことに、再解釈作品として映画やTVドラマがたくさん作られています。今日本で手に入れやすいのは、大恐慌時代のジョージ・キューカー監督版(1933)と、戦後多くのアメリカ兵帰国に伴う職業婦人の専業主婦化圧力があった時代のマーヴィン・ルロイ監督版(1949)、スタッフ全員女で作ったフェミニズム解釈のジリアン・アームストロング監督版(1994)です。そしてもう一つが、「世界名作劇場」のアニメ『愛の若草物語』(1984)。このアニメは父親が無理矢理何度も登場して大活躍します。

これらの映画やアニメと比較しながら再読すれば、読者一人一人に、新しい『若草物語』の解釈が生まれると思います。

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『ルイーザ・メイ・オールコットの日記―もうひとつの若草物語』(ジョーエル・マイヤースン:編)もご参考に。

最後にもう一冊。原作では不在の父親。彼の側を描いた『マーチ家の父もうひとつの若草物語』(ジェラルディンブルックス)も併せてどうぞ。(ひこ・田中)








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