エッセイ

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晩ごはん、なあに?(9)クルビを食べて、夢に挑戦!  北原恵

2011.08.30 Tue

 2011年8月25日、私の晩ごはん。

 ソウルに来て、今お世話になっているホームステイ先で初めていただいた晩ごはんです。

 ご飯と、ワカメと貝の味噌汁のほか、キムチチゲ、クルビ(イシモチ)の焼きもの、クルビの煮物、豆、海苔、カクテギ、卵蒸が出ました。おいしそうでしょ?

 なかでも私が気に入ったのは、韓国語で「クルビ」というイシモチの干物です。単に魚を焼いただけとは思えない深い味があります。見かけは安そうな魚に見えますが、韓国では価格も高く高級な魚として有名だそうです。それも知らずに、私はあまりに美味しいので、ご飯ではなくクルビをお代わりしてしまいました。

 クルビには楽しい昔話もあります。ケチなジャリンゴビは、このクルビを天井から吊るして、食事のときには一度だけクルビを見て、味を想像しながらご飯を食べたそうです。ある日、息子が二度、クルビを見たので叱りつけ、「見るのは一度だけにしろ、しょっぱいだろう」と言ったとか。

 キムチチゲは、キムチや豚肉がたっぷり入っていて、アツアツをふぅふぅ言いながら食べます。具のキムチもカクテギ(大根のキムチ)も、パレキム(たぶん海苔を煮たもの)も、全部、ここのハルモニの自家製です。ほんとにこんなに美味しいものが作れるなんて、すごい!

  おいしい、おいしい、と言いながら食べていたら、もう一品、ケラン・チム(卵の蒸しもの)が出てきました。ケラン・チムは、韓国風茶碗蒸しと説明されることが多いですが、ここのは、もっと具が多くて、ニンジン、いんげん、シメジなど、野菜がいっぱい入っていて、オレンジや緑色がとってもきれいです。ふわふわの卵の触感は、気持ちをあたたかく、幸せにしてくれます。

 さて、今、泊めていただいているのは、延世大学の近くのマンションの最上階22階の一部屋。見晴らしはいいし、朝晩は風通しもよくて涼しく、快適です。今まで韓国に来るときはいつもホテルを利用していましたが、今回、ホームステイしているおかげで、普段の韓国人の生活にも触れることができ、楽しさも一層です。今回の滞在の目的は、延世大の3週間韓国語プログラムに参加することなのですが、ここまで来るまで大勢の人のお世話になりました。仕事のこと、老親の介護のこと、育児のこと。ほんとにこんなに長く留守ができるのか、とうてい無理だと思っていました。しかも50代半ばから新しい語学に挑戦するなんて、自分でも頭がクラクラします(今も)・・・

  でも、年を取って頭が固くなってるときこそ、また、介護や育児、仕事で忙殺されて身動きがとれないときこそ、これまで本当にやりたかったことや、新しい語学に挑戦するのはお勧めです。いくつも山を越えて、やっとたどり着いたソウルでの初めての晩ごはんは、ひとしお、その味が心とからだに浸みたのでした。マシッソヨ! チャルモゴッスムニダ!

カテゴリー:晩ごはん、なあに?

タグ: / 北原恵 / 韓国

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