エッセイ

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[サンフランシスコ便り(12)]Kasiのこと 堀川弘美

2012.04.15 Sun

Kasiというハウスメイトのことを紹介したいと思う。彼女はAsian Prisoner Support Committeeのコアメンバーの一人であり、Children Hospitalの看護士さんであり、職場の組合のようなものの活動家であり、インド人のお父さんと日本人のお母さんを持つ3人姉妹の一人であり、和太鼓の生徒であり先生でもあり、ヨガの生徒であり、瞑想にも興味を持って通う生徒であり、仏教のお寺にも通う信者でもある。また捨てられたり虐待されたりした犬を次の飼い主が見つかるまで預かるようなボランティアもしている。チャルーパというチワワと何か混ざった犬が、何かを察知するのか、とても愛想のいい子なのに、もらいたいという人が来ると急に愛想をなくして、おしっこをとんでもないところにしてみたり、悪いことばかりお披露目したりしてついに貰い手がなくて、数週間前にKasi自身が里親になった。私も、どこに住もうかさまよい歩いていたら、Kasiが「ドアのない部屋ならあるよ。」とさらっと引き受けてくれた。

先週、春休みだったので彼女の彼Harrisonと数人でキャンプに行こうかと言っていたが、雨で中止になったと思ったら、リビングルームの暖炉に火をおこし、マシュマロを焼いてビスケットにチョコと一緒にはさんで、キャンプファイヤー。そして暖炉の前にお布団を持ってきてキャンプ。

彼女の彼はちょうど二年前の4月8日に刑期を終えて刑務所から出てきた人。サモア人で太平洋の島の人。まだシェルターで暮らすことを課せられているHarrisonの部屋にKasiは入れない。いつも仲良くて、楽しいことを開発する二人と一緒に暮らせる私は本当に楽しくておなかがよじれるほど笑う日々。

一つだけエピソードを。。。チャルーパが脱走して何かくさーい液体を身体につけて帰ってきたらしい。Kasiがせっせとお風呂で掃除をしていたので、何かと思って尋ねたら、KasiとHarrisonがくさいチャルーパを洗おうとしたのだが、あまりの臭さにHarrisonが洗っていたチャルーパの上に吐いてしまって、大変だったと。。。Harrisonは倒れて休んでいた。。。すごく大変だったと思う。。。

こんな風に書くと、とっても気合いの入った女性かと思われるかもしれないけれど、とんでもない。すごくいい感じに気の抜けた、どちらかというとふんにゃりしたすてきな子。

4月6日から9日までネバダ州にある湖タホにAsian Prisoner Suppurt Committee の研修?旅行に行ってきた。10人で楽しい楽しい時間、ものすごくエンパワメントされる時間を過ごした。二日間連続で明け方まで過ごしたCasinoでのKasiの活躍はすごかった。コアメンバーのBen、Eddyそして彼のHarrisonがそれまでに負けて損していたお金を、Kasiがやっていた”CRAP”というサイコロを使ったギャンブルでそれぞれ取り戻した。サイコロを投げて、一投目に7か11が出ると自動的にかけていたお金の分が参加者全員に帰ってくる。でも逆に二投目に7が出てしまうとそこで投手交代でゲームオーバ—。わたしなど二投目で早々に7が出てしまってかけていた5ドルを失った。Kasiは30分以上も投げ続けるという離れ業を見せ、周囲を魅了。一投目で見事に7を出し、二投目では出さない。二投目に出た数字が次に出るまで投げ続けるのだが、また見事にその数字を出すKasi。Kasiのおかげで、わたしもようやく終わり頃にそのルールを分かりかけるという貴重な経験をさせてもらった。他にそのテーブルに参加していた人たちもKasiのおかげで大もうけ。まるで天使ような存在で、わたしたちが帰るとき、後ろから“No!! She is leaving!!” “keep smiling!!”との声かけが耐えなかった。

Kasi, Ben, Eddyは刑務所でのボランティアなどができるBrown Cardをトレーニングを受けて取得。今、数ヶ月後から重罪の人たちが収容されていているSan Quentin State Prisonでのワークショップを始める準備を、刑務所と会議をしながら着々と進めている。

こんな風にしなやかにたくましく生きている子が近くにいることは、すごく刺激的で、私自身のあり方をいつも考えるきっかけを与えてくれる。こんなKasiのいるAsian Prisoner Support Committee の将来を想像するとわくわくするのはわたしだけではないと思うのだが。。。どうですか??

カテゴリー:サンフランシスコ便り

タグ:アメリカ / 堀川弘美