2014.11.18 Tue
裁判で離婚を認められる場合はどんなときですか。
悪意の遺棄 ◎ 離婚原因 前回書いた通り、裁判によって離婚が認められるには、民法770条1項の離婚原因が必要で、今回は前回書けなかった、 ・ 配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号) ・ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号) ・ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号) ・ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号) のうち、2号の「悪意の遺棄」を取り上げます。
◎ 悪意の遺棄(2号)
夫は子どものおむつも換えてくれない、沐浴もしてくれない、共働きなのに家事もほとんどせず、コミ捨てくらいしかしてくれない…。これは「悪意の遺棄」でしょう?!そう憤る気持ちはわかりますが、しかし、「悪意の遺棄」と評価されるのは難しいと思います。
「悪意の遺棄」というのは、客観的にみて、配偶者も婚姻生活ができないと認識するような事実を意味します。夫は無神経ですけれど、彼自身は婚姻生活ができなくなる程度とはさらさら思っていないでしょうし、客観的にみても、その程度ではないとされるでしょう。
ではどんなことが「悪意の遺棄」にあたるのでしょうか。婚姻生活を送るには、経済的基盤が必要です。簡単にいえば、生活費がないとやっていけません。民法760条も、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と夫婦双方が生活費を負担することとしています。生活費を負担していなくても、夫婦で話し合ってどちらかが専業主婦・専業主夫になっているとか、失業して生活費が出せない、病気で働けないなどの事情がある場合には、悪意の遺棄にはあたりません。
生活費を十分くれない場合はどうでしょうか。配偶者の収入や、夫婦の生活水準等により、その金額が「十分」なのかどうか、判断は難しいものです。 とはいっても、十分な収入があるのに、家計には格段に少ない額しか入れてくれない場合には、協力し合って家庭を維持していこうという姿勢を疑ってしまいますよね。たとえ、自分に一定の収入があって何とか生活が出来る場合でも、不満を抱くのもわかります。このような場合には、生活費の不払いを「婚姻を継続し難い重大な事由」(5号)として主張できるでしょう。
「夫が極端にケチで、がみがみ言ってくる」ということもよく聞くものです。しかし、たとえば「家中の電気を切って歩く」など、環境保護の観点から良しという見方も出来る等、価値観の違いというほかないところもあり、「婚姻を継続し難い重大な事由」(5号)としても厳しいかもしれません。
◎ 浪 費
単に生活費を入れないだけでなく、その原因が過度の浪費である場合もあるでしょう。生活を成り立たせるのも覚束ないほど、浪費してしまうとしたら、誠実に婚姻生活を維持しようという意思を疑ってしまってもしかたありませんよね。その場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められうると思います。
たとえば、夫が競輪、競馬等の賭け事に没頭して労働意欲も乏しく、深酒を重ね、浪費癖に富み、ほとんど生活費を渡さなかったケース(東京家審昭和42年7月28日家月20巻2号60頁)など、過度の浪費なども考慮して「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められています。
しかし、妻が何かのささやかな記念に「自分へのご褒美」と若干奮発したことがある程度で、「浪費」などと主張されることがありますが、その夫婦の生活水準からして度を超した浪費でもなければ認められません。その程度のことを執拗に主張していると、むしろ、「ほかに主張することがなく、離婚原因がないのだな」という印象を生じさせかねないでしょう。
◎ 客観的に離婚原因かどうか冷静に判断を
何事もそうですが、客観的に離婚原因と評価され得るか、冷静に考えてみてから主張してくださいね。その点、弁護士を代理人にしているなら、冷静に離婚原因になるかならないか指摘してくれることでしょう。 もっとも、「本人が思いのたけを書いたものをそのままコピペしてないか?」と思わせられる代理人の書面に面食らうこともあります。
思いのたけを代理人がそのまま主張してくれたらその時点ではスカッとするかもしれませんが、結局裁判所に「箸にも棒にもかからん」と請求を棄却されては元も子もありません。もちろん、ろくに話を聞きもせず面倒くさそうにはねつける弁護士はとんでもないですが、あなたの語る生の事実をじっくり聞き、その上で、時には耳に痛いことも言ってくれるのがプロ。訴訟までいったなら、なおさら弁護士選びも大切です。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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