2015.07.19 Sun
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彼女の新作が出るたびに、お気に入りの作品が増えていく。『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』『テイク・ディス・ワルツ』と、作品の一つひとつで辛らつに愛を描いてきた、女優で映画監督のサラ・ポーリーが新たに届けてくれたのは、自らの出生を探る、初のドキュメンタリー映画だ。
父マイケルはイギリス出身の舞台俳優、母ダイアンは元女優というポーリー家の、5人きょうだいの末っ子に生まれたサラは、11歳のときに母ダイアンを亡くしている。太陽のように明るく、陽気で無邪気な性格のダイアンは、いつも周囲に魅力を振りまく存在だったが、サラには、母の記憶があまりない。小さなころ「サラだけがパパに似ていない」とジョークを言われて成長したサラは、いつしか、母の人生と自らの出生の秘密を探り出す・・・。この映画は、父マイケルを始めとして、4人のきょうだいたち、ダイアンと関わりのあったさまざまな人たちに彼女についての記憶を語らせながら、誰からも愛されたダイアンの人生と、彼女の口からは語られることのなかった事実を映し出していく。
ダイアンの人生が明らかになるにつれ、妻・母としてだけではなかった彼女の素顔が見え、同時に、サラが知らなかった秘密が姿を現してくる。そのプロセスは、まるでミステリーのようにスリリング。しかし、この映画は驚くことに、ちゃんとした脚本を手にした父マイケルの語りによって始まり、ダイアンの過去を映すシーンにはフィクションまで挿入されているのだ。事実は一つだけれども、一人ひとりの胸にある真実は、いくつもの姿を持っている。自分自身をも映す対象にしながら、家族への丸ごとの愛と信頼を土台にしてそれぞれの語る真実を編みあげ、これほどユーモアと愛情あふれる作品に仕上げた、サラの度胸と世界観がほんとうに素晴らしい。男同士の愛の競り合いもフェアに映すところなど、思わず口元が緩んでしまう。公式ウェブサイトはこちら。
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