シネマラウンジ

views

3113

『フランシス・ハ』 モノクロで描かれる、モラトリアムな女性たちへのエール! 中村奈津子

2015.09.19 Sat

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.

主人公は不器用で見栄っぱり、自ら「非モテ(nondatable)」と恋愛にも開き直る、27歳のアラサー女子・フランシス。彼女はモダンダンサーを目指し、ニューヨーク・ブルックリンで親友のソフィーと暮らしている。というとオシャレだが、結婚をせまる、イケてない彼氏を振ったばかりで、ダンサーとしても鳴かず飛ばず。そんなフランシスにまるで追い打ちをかけるように、ある日ソフィーまでが突然、別の女性とルームシェアをすると言い出したから大変!離れていくソフィーの前では強がってみたものの、家賃を一人で払えるわけもなく、あわてて別の住まいを探すけれど、やることなすことが上手くいかなくて・・・。

ちゃちな虚栄心で、すぐに見栄を張ってしまうフランシスの、空気を読まない言動は正直、かなりイタイ。27歳なんだから、もうちょっと上手く立ち回る術を身につけたっていいのになぁ、とも思う。だけど、スクリーンの中で軽快に走って、すっ転んでも立ち上がり、悩むより先に次へ進む。そんな、前のめりなくらい前向きに生きる彼女はいつも、どこか憎めない。全力で生きる彼女への、プレゼントのようなラスト、タイトルの「ハ」って何なの?が分かるシーンで、一気に心がほどけること請け合いの作品だ。

恋愛、仕事、結婚・・・、人生の選択肢は、どこにたどりついたら幸せ、なんて答えはない。失敗しちゃった、って思っても、それが本当に失敗かどうかなんて、次に手にした人生によってコロコロと変わるもの。フランシスがデヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」に乗って、踊りながらニューヨークの街を駆け抜けるシーンは、たくさんの葛藤を抱えながら生きるわたしたち、全ての女性へのエールのよう。どちらかというと肩幅が広くって骨太のフランシスがヒロインっていうのも、わたしには愛おしく思えるところ。公式ウエブサイトはこちら








カテゴリー:新作映画評・エッセイ / DVD紹介

タグ:くらし・生活 / 映画 / 働く女性 / 中村奈津子