2014.05.01 Thu
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毒婦たち 東電OLと木嶋佳苗のあいだ
上野千鶴子×信田さよ子×北原みのり 著
河出書房新社
2013年10月20日発行
ここに登場する女たち、「東電OL」、木嶋佳苗、上原美由紀、角田美代子、下村早苗、畠山鈴香、そして壇蜜。男に殺された女、男を殺した女、男を悩殺する女―毒婦たち。毒婦とは、辞書によると、人をだましたりおとしいれたりする無慈悲で性根の悪い女、とある。
人をだましたり、おとしいれたりするため、木嶋佳苗は、男たちに何をしたか。なぜ男という対象を選んだのか。上野さん、信田さん、北原さんの対談は、実際に起きた犯罪という事実の淵源を探り当てる。売春、援助交際、婚活詐欺、暴力、制裁、貧困、子ども。現代の社会システムのなかで翻弄させられるたびに、女たちはその底辺あたりで地響きを感じながら共に振るえ蹴散らされてきた。
彼女たちは、自ら人と関わり、人を殺めとっていく。それが、彼女たちの生き延びるための手段だった。いや、もしかしたら、生き延びる、ではなく、今を生きるだけの手段だったのかもしれない。先のない今だけの手段だからこそ、それは諸刃の剣。空ろいやすい宿命にある。そこには、この世を生きる女たちの、わが身を呪縛する姿が透けて見える。
この本を手に取り、最後まで読み終え、上野さん、信田さん、北原さんに共鳴したあなたもまた、毒婦なのかもしれない。犯罪者にはならない。でも、自分を大切に思えない時期があった、と思い当たることがあれば、この本にたどり着いたあなたは、自ら毒をまわらせずに生き延びていける。
最後に、「毒婦」とは、男メディアがたまたま「毒婦」と呼んでいるのに過ぎない(本文p.205)、と言い添えておきたい。
堀 紀美子
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