監督も知らない、役者も知らない。  
ひと足先に試写会で、観て感じたまんまをいけしゃぁしゃぁと映画評。   
筆/さそ りさ 
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トランボ~ハリウッドに最も嫌われた男  

さすがに、「ローマの休日」を知らない映画ファンはいるまい。
ただ、その脚本は誰が書いたのか、知る人はいまい。
調べて、イアン・マクレラン・ハンターだとわかったとしても、 実はその人が書いたものではないのだ。

第二次大戦後、共産主義者とその同調者に対する“赤狩り”が猛威を振るうアメリカ。
その理不尽な弾圧は、ハリウッドにも及ぶ。
そうなると、権力に媚びてすり寄る者、主義主張を変える者、
抵抗する者に分かれるものだが、当時もまさにそうであった。
若い頃、共産党員であったものの不平等を憎む愛国者であり
脚本家としての実績あるダルトン・トランボ(42歳)は、
議会での証言を拒否したことからハリウッドで最初の標的に。
加えて、権力に媚び彼に言われなき汚名を着せる者がいて、トランボは投獄されてしまう。
1年後に出所できるが、キャリアを絶たれた彼にはかつてのような仕事はない。
格安のギャラでB級映画の脚本を書き散らし食いつなぐが、家族の協力がせめてもの救いの日々。

トランボの活動は、偽名での創作となる。
とはいえ、言論や思想の自由を貫く彼の勢いは衰えることはなく、
いよいよ「ローマの休日」がアカデミー賞に。
友人であるイアン名での作品だから、オスカー像を手にすることはできない。
同じことが、3年後「黒い牡牛」での受賞でも。その名は、ロバート・リッチ。

近年の、数々の賞には商業主義的な臭いがしないでもない。
が、トランボの頃は、無名であろうと実績の有無にかかわらず
素晴らしい作品に対しては正当な評価がなされていたことを知ることができる。

2度目の受賞から3年後、「スパルタカス」の製作・発表に向けて、トニー・カーチスがトランボに脚本を依頼する。
その際、「最高の脚本を書かないと、あんたの実名をクレジットに載せるぞ」とウイットたっぷりに説得するトニー。
結果、誰もが知る作品が生まれ、ケネディー大統領も高く評価。
権力者の評価が影響したとは言わないが、トランボ(55歳)公式復帰の機会となる。

権力の理不尽さ、圧力に屈する者たちのあり様、何よりも戦争の愚かさ悲惨さを描いた作品は数々あるが、
正義をかざすことなく、こうした切り口でセンスよく訴求する作品は希有だ。その分だけ奥深い。

さすがにこの作品、脚本家のことを描いて脚本賞を受賞しないわけにはいかないだろう。その思いで確かめた。
アメリカ脚本家組合賞/脚色賞ノミネート。真実を描いた、感動せざるを得ない作品である。

2016.6.16試写

2016年7月22日(金)全国ロードショー 名古屋/TOHOシネマズ名古屋ベイシティ

©2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
2016年7月22日(金)よりTOHOシネマズ名古屋ベイシティ他全国ロードショー 8月6日(土)よりセンチュリーシネマにて拡大公開
監督:ジェイ・ローチ(『ミート・ザ・ペアレンツ』) 脚本:ジョン・マクナマラ 原作:ブルース・クック(「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」世界文化社刊)
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、エル・ファニング、ヘレン・ミレン ほか 2015年/アメリカ/124分
公式HP:http://trumbo-movie.jp/