
長年、英語学習者に愛され続けている
スクリーンプレイ・シリーズの最新作
『シャーロック 忌まわしき花嫁』が発売されました!
名作映画のセリフを完全に再現した本シリーズには、和訳はもちろん、英語や作品内容の詳細な解説とコラムがついており、1冊で様々な楽しみ方ができるよう工夫を凝らしてあります。
本作品で翻訳・解説と巻頭コラムを担当した私から、映画と本書の魅力をお伝えしましょう。
『シャーロック 忌まわしき花嫁』(原題:SHERLOCK The Abominable Bride)は、BBCの大人気ドラマシリーズ、SHERLOCKのスピンオフ映画として2016年に公開されました。
現代と19世紀ヴィクトリア朝のロンドンを舞台に、エミリア・リコレッティが起こした殺人事件を中心に、複雑なストーリーが展開されます。もちろん、主人公のシャーロック・ホームズが、相棒のジョン・ワトソンをはじめとする個性的な登場人物たちと繰り広げる知的な会話や謎解きも健在です。ロンドン市街やイギリス国内各地の名所がロケ地になっており、ヴィクトリア朝期の衣装やインテリア、馬車などが時代の雰囲気を存分に醸し出しています。
この作品をWANの皆さまにオススメしたい理由は、映画のテーマがズバリ「女性」であること!
本書で映画の台詞を読んでみると、その端々にヴィクトリア朝後期の男女観や社会の動きが如実に反映されていることが分かってきます。ドラマシリーズでは邪険に扱われていた女性たちですが、映画の中では脚光を浴びつつ、慎ましく男性に服従することが求められたヴィクトリア朝の道徳観や階級差を鮮明に表現していると言えます。その一方、ワトソンの妻メアリーの力強く自立したキャラクターは、男性に頼らない新しい女性像を示しており、観る側に希望の光を与えてくれています。詳しくは、私が執筆した巻頭コラム「ヴィクトリア朝について」を参考にしてください。
終わりなき「人類の半数と残り半数の戦争」をテーマとした本作は、現代社会に通じる男女の性別役割分業観や女性の結婚・職業選択に関する諸問題を再提示してくれています。花嫁衣装に身を包んだエミリアが、なぜ民衆に向けて銃を乱射した後自殺を図り、亡霊となって夫を銃殺したのか。彼女が「どうやって」、そして「なぜ」夫を殺害しなければならなかったのかという部分に注目してもらえたら、自ずと物語の謎が解け、映画製作者の意図が見えてきます。
実は映画の内容をさらに深く理解するためには、BBCドラマシリーズとコナン・ドイルの原作小説を読み込む必要があります。ところが、本書を手にとってもらえれば、そのような必要はありません。ドラマシリーズのファンでさえ理解に苦しむストーリー展開なので、本書の解説欄では時代背景やドラマ・原作との関連を詳しく説明しています。また、本書の特徴として、映画・ドラマを観たことがない方のために、日本語訳を読むだけで一冊の小説を読んでいるような気分を味わえるよう訳出に注意を払い、より自然な日本語表現の使用を心がけました。もちろん、英語学習者向けに、英語解説や例文も数多く掲載しています。ぜひ書店でお気軽に手に取ってみてください。最後に、本編中のシャーロックの台詞を借りて、
“There’s not a moment to lose!”「一刻の猶予もないですよ!」
(山田千聡/アステージ・メンバー第一期生)
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