ひとり一人違った状況であったとして、
セックスを、自分の中心において考えるとき、
その人のその後の人生を大きく変える経験を持つ人は
多いのではないだろうか。
にもかかわらず、セックスは、公然と語られていいテーマではなく、
「セックスと新聞は、あまり相性が良くありません。」(おわりに)
と言うように、公に声を上げ、
人の目にさらされていいものとしては扱われていないのが現実である。
もちろん、公然わいせつという名の罪名があるほど、
どんな場所でなにを言っても見せてもいいというものではないことは、
当然のことであるが、それによって、覆い隠してきたことで、
女性の性は、重要な視点であるにもかかわらず、
どこかよそよそしさを含み、自分の内側に秘め、
「恥」として言葉にできない状況を押し付けられてきたように思う。
それらはいつも、男性中心、男性優位の社会が、
女性を抑えつけてきたことから始まり、
そのなかに「こんな目に遭っている」と思ってきた女性の
声にならない思いや、耐え忍んできた思いがあった。
いまここに、「セックスと新聞」という相性の悪さを超え、
SNSというツールを得た女性たちが、
いままで押し殺してきた声をあげ、
さまざまな女性の体験を聞き、
「自分ひとりではない」と心の支えを得て、
自分を大切に考え始めている。
ひとつひとつの流れはたとえ小さくても、
それらはやがてうねりとなり、
時代の潮流として変革をもたらす。
まだ、その発信が日本中、世界中のすべての地点からではないにしても、
いつかそのすべての場所に流れが届くことを信じ、
いま、わたしの中心に向き合う。
わたしの気持ちをないがしろにしない。たいせつにする。
■ 堀 紀美子 ■
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朝日新聞「女子組」取材班著
『オトナの保健室 セックスと格闘する女たち』
(集英社 2019年1月発行)
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