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”ぶった斬り”映画評 『沈まぬ太陽』 みるとるみ

2010.09.28 Tue

かねてから私は、おっさんという人種は、なぜつまんない出世競争に汲々としたり、あるいは仕事しなくていいからそこにいて、といった屈辱的な状況に 耐えてまで会社にしがみつくのか、誠に疑問に思っていた(実際私は、そういう姿をたくさん見て、ばからしくなって会社を辞めてしまったくちである)。同様 の意見をもつ脱サラ男性と一緒に「沈まぬ太陽」を見終わったとき、我々二人は思わず顔を見合わせてしまった。

あれ、世間(特に中年男性?)の評判はいいらしいけど、ほんっとにばかくさい。組合の仲間のために働いた渡辺謙が僻地に飛ばされても頑張る姿が、お そらくサラリーマン諸氏の心を打ったのだろうが、冷静に考えれば、あれってタダのぶら下がり社員ですよ。仕事もないのにムリムリ仕事作って勝手に汗かい て、臥薪嘗胆とか言いながらライオン狩り。本当に会社のことを思うなら、そして本当に世間に役立つ仕事をしたければ、あんな時間の無駄遣いしないでとっと と辞めてANAでもJRでも転職すりゃーいいのに。しかも、意味不明のオトコのプライドを守るため、鈴木京香みたいなキレイな奥さんどころか、実の母親ま で犠牲にして。

もちろん、御巣高山墜落事故のときの尽力はすばらしい。あの場面は泣ける。でも、あの処理がその前の数十年だかの無為なサラリーマン生活を Justifyするに足るものなのだろうか。結局あの「活躍」がまたぞろ会社のトップの気に触って、またまたアフリカに飛ばされて、今度こそ退職金までラ イオン狩りして暮らすわけでしょう。どこが男のロマンなんだか。

また、一部の女性も感動しているそうだが、それは松雪泰子の献身的な姿のせい? 三浦友和がどんなにかっこいいか知らんが、それこそ何十年も愛人続 けるなんて、性格が卑屈になるだけだろう。しかも愛人の出世のためにやりたくもない隠密みたいな任務まで課されて、おまけに暴力まで振るわれるなんて、 「ワタシって、悲劇の主人公(涙)」という自己陶酔タイプの前近代的女性ならともかく、今更もう時代錯誤じゃないだろうか。

ああいう映画が受けるというのは、まだまだ日本も「昭和」を引きずっていると思う。ついでに言うと、ハリウッドではCGや3Dの技術が進んで、映像 だけでも息を飲むような映画がバンバン上映されているというのに、羽田空港から飛び立つジャンボジェットの合成映像は、まるで「ウルトラマン太郎」を見て いるような、お粗末きわまりない出来だった。

素直に感動した方々、ごめんなさい。でも、脱サラ組の我々は、最初から最後まで「わかんないね~」としか言い様のない、眩暈がしそうな映画だった。

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みるとるみ/家電メーカーからPEファンドに転身を図ったあと、モノやカネよりヒトが好きなことに気付いて独立、コンサル業へ。今や仕事はそこそ こ、自称エッセイストとしてブログ書きながら、自由に機嫌よく生きることが人生のプライオリティー。ブログ   http://miltlumi.exblog.jp/

カテゴリー:新作映画評・エッセイ / DVD紹介

タグ:仕事・雇用 / 映画 / 女性に対する暴力 / DVD / みるとるみ