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“思い出の1本”映画評 『愛を読む人』 星薫子

2010.10.19 Tue

<div class="old cf"><p><strong>朗読する、それだけのことが、こんなにも恥ずかしい</strong></p><p>最近「朗読」って何だろう、と考える機会があり、ふとこの映画を思い出した。</p><p>この作品では重要なモチーフになっている。</p><p>ストーリーは、15歳の少年ミヒャエルが一夏の恋をした年上の女性が、実はナチスの戦犯だったというもの。数年後、法学生となったミヒャエルは被告 人席の彼女を見つける。次第に明らかになる彼女の過去のなかでも、彼が大きくショックを受けたのは、彼女が収容所のユダヤ人に文学や詩を朗読させていた、 という点だった。それは、彼女と愛し合った夏の間、まさに彼がしていたことだったのだ。裁判の行方を息をつめて見守るミヒャエルに、ひとつの疑念が湧く。 あの朗読はセックスの前偽などではなく(彼にとってはそれ以外の何物でもなかった)、彼女にはもっと大きな意味があったのではないだろうか、と。そして重 い刑に服すこととなった彼女に、ミヒャエルは再び朗読を聞かせる。テープに吹き込み、刑務所に届けるという形で。</p><p>ネタバレで申し訳ないのだが、彼女は字が読めなかったのだ。彼女の秘密を知ってからのミヒャエルの朗読と、15歳の時の朗読とは、根本的に意味が違 う。語られる、という手段でしか物語を知り得ない彼女のためにチェーホフを朗読する、それは、彼が彼女にとっての翻訳機械となり、外界に橋をかける瞬間 だ。この場合の朗読は愛の囁きというより、生命線をつなぐシリアスなものだ。</p><p>なぜこんなことを考えたのかというと……。もうすぐ2歳になる息子に絵本を読み聞かせるにあたって、つくづく「恥ずかしいなあ」と思ったからだ。な んてパーソナルで秘密めいた行為なんだろう。しかも小さな息子には、『ノンタン』だろうが『ひとまねこざる』だろうが、全ては私の口から聞かされたオリジ ナルとして吸収される。まだ文字の介在しない詩的な世界に住んでいる人間に、文字で書かれた物語を伝える、これは責任重大だ。映画はテーマが重いだけに 「朗読」の持つ意味もエモーショナルにならざるを得ないが、これほど特殊な状況でなくても、人に物語を読み聞かせるのは、それなりに覚悟のいることだ。</p><p><strong>アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.</strong></p><p>星薫子/翻訳、執筆業。パパラッチ写真を扱っていた通信社勤務時代より、ハリウッド・ゴシップ好き。現在ゴシップ雑誌や、海外TVドラマ情報誌で執筆中。また怪奇小説やホラー映画、ゾンビものも大好き。こちらは仕事に結びつかず……</p><p><input name="amazon_small_image" type="hidden" value="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41hmIayU5VL._SL75_.jpg" /><br /> <input name="amazon_medium_image" type="hidden" value="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41hmIayU5VL._SL160_.jpg" /><br /> <input name="amazon_large_image" type="hidden" value="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41hmIayU5VL.jpg" /><br /> <input name="amazon_title" type="hidden" value="愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]" /><br /> <input name="amazon_author" type="hidden" value="" /><br /> <input name="amazon_manufacturer" type="hidden" value="20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン" /><br /> <input name="amazon_publidation_date" type="hidden" value="" /><br /> <input name="amazon_url" type="hidden" value="http://www.amazon.co.jp/%E6%84%9B%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80%E3%81%B2%E3%81%A8-%EF%BC%88%E5%AE%8C%E5%85%A8%E7%84%A1%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E7%89%88%EF%BC%89-%E3%80%94%E5%88%9D%E5%9B%9E%E9%99%90%E5%AE%9A%EF%BC%9A%E7%BE%8E%E9%BA%97%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%96%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B9%E4%BB%98%E3%80%95-DVD-%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88/dp/B001S2QNMS%3FSubscriptionId%3DAKIAIVGUGFNUCXEGTYGA%26tag%3Dpokemonnohiro-22%26linkCode%3Dxm2%26camp%3D2025%26creative%3D165953%26creativeASIN%3DB001S2QNMS" /></p></div>






カテゴリー:新作映画評・エッセイ / DVD紹介

タグ:セクシュアリティ / 映画 / 恋愛 / DVD / アカデミー賞 / 女と映画 / 星薫子

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