
おひとりさまの最期
上野千鶴子 著
朝日新聞出版 発行
2015年11月発行
どこの空だろう。青く澄んだ空、見上げると一羽の鳥がながくしなやかな軌跡を描いて、たかくたかく舞い上がっていく。こんなふうに見送られる時がだれにでも訪れる。
『おひとりさまの老後』(法研、2007年/文春文庫、2011年)、『男おひとりさま道』(法研、2009年/文春文庫、2012年)につづく『おひとりさまの最期』。「おひとりさまシリーズ」三部作を出版する約束を果たしたと上野さんは言う。その表紙に描かれた青い空を、一羽で飛んでいく鳥がゆがんで見える。
「生まれることと死ぬことは、自分の意思を超えています。それをもコントロールしたいと思うのは、神をも怖れぬ不遜。ですが、生きているあいだのことは、努力すれば変えられる。与えられた生の最後までを生きぬくこと、そしてわたしだけでなく、家族のあるひとも家族のないひとも含めて、多くのひとたちにとって、安心して過ごせる社会をつくること。」(本文p.270)
順調に加齢し、自分の同世代や自分より年少の世代の人たちの訃報を身近に聞くようになったという上野さんが、おひとりさまでも、そうでなくても、安心して死ねる「死に方」をテーマに、社会学者としての研究発表を、読む人への贈り物として託し、届けてくれた。人はだれも死に方を選ぶことはできないが、生から死へと移行するそのときまでの生き方をどう生きてきたかが、死に方を左右することがあるのだろう。
裏表紙には、一枚の真白な羽根が描かれている。故人が残していったその羽根に、切なさと優しいぬくもりを感じる。思いを分かち合った時のながさが、そのさみしさを増長させる。
ともに時をかさね生きた友人や家族がいるから、ひとり旅立つことができるんじゃないかな、と思う。「これで安心して死ねる」と思うあなたの生き方を、本書とともに。
■ 堀 紀美子 ■
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