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法律

相談 7:国際結婚のときの法律問題(その2)

2012.03.20 Tue

次男(26歳)が中国の女性と結婚することになりました。
もちろん、結婚については賛成しています。
一つ、心配なことがあり相談します。
今後、国籍が異なることで何か法律的な問題が起きる可能性はあるでしょうか。
例えば、③相続の場合、④離婚となった場合などがあるのではと思います。

回答

相談 7:回答 打越さく良さん(弁護士)

外国人の方との離婚や相続などの渉外事件では,どちらの国の法律が適用されるかということが問題になります。日本では「法の適用に関する通則法」(通則法)が,どの国の法律をその事件に適用するかについてのルールを定めています。
③ 相続は,日本の通則法では,「被相続人の本国法による」(36条)となっています。
そうすると,もし中国の女性の方のほうが早く亡くなられて,相続が問題になる場合,通則法上は,中国法が適用されることになります。
ところが,中国民法通則(146条)は,法定相続につき,動産は被相続人死亡時の居住地の法律を適用し、不動産は不動産所在地の法律を適用することとしています(中国民法通則149条)。
となると,相続財産が動産の場合,中国の女性が亡くなった時に日本に居住していたら,日本法が適用されることになります。また,中国の女性が所有する不動産が日本に所在したら,日本法が適用されることになります。このように,日本法が指定する準拠法が中国法で,中国法が指定する準拠法が日本法の場合,日本法が準拠法とされることになります(反致,通則法41条)。
となると,日本の民法の第5編相続の条文に則っていくことになりますが,女性とご次男との間にお子さんがいらしたら,ご次男とお子さんが相続人になりますが,お子さんがいなければ,ご次男と直系尊属(中国の女性の父母など),直系尊属がいなければ,中国の女性の兄弟姉妹が相続人となることになります。ご次男以外の相続人の方との連絡をつけることが,実際上大変かもしれません。
ご次男のほうが早く亡くなられた場合,被相続人であるご次男の本国法である日本法が適用されます。
④ 離婚の準拠法は,通則法27条によると,夫妻の本国法が共通であれば共通本国法,共通本国法がない場合で共通常居所地法がある場合は共通常居所地法によります。それもない場合は,夫婦に最も密接な関係がある地の法によります。
ただし,当事者の一方が日本に常居所地を有する日本人の場合は,日本法によります。そこで,ご次男と女性双方が日本に居住していて離婚するには,準拠法は日本法になります。またご次男が日本に居住し,女性が中国など外国に居住していても日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められる場合も,準拠法は日本法となります。
離婚に付随して子の親権の決定を行う場合,離婚の成立と親権の決定は法律関係が別なので,準拠法は別途選択されることになります。親子間の法律関係の問題として通則法32条に寄ることになり,子の本国法が父又は母の本国法と同じである場合は,子の本国法によることになります。
財産分与の準拠法は,離婚と同じく,通則法27条によって,準拠法が選択されます。
慰謝料の準拠法も,離婚に付随する問題として,通則法27条による例が多いようです。
裁判が必要になる場合,夫妻が日本に住んでいる限り,日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。
しかし,ご次男が日本に居住し,女性が中国に居住している場合に,ご次男が女性を被告として,日本の裁判所に離婚訴訟を提起したくても,原則的には被告の住所が基準となります。,女性が行方不明の場合等の例外的な場合に限り,日本の裁判所の国際裁判管轄が肯定されます(最高裁大法廷昭和39年3月25日判決)。
渉外相続,渉外離婚は専門的な知識が必要ですから,いざというときには,渉外事件に精通した弁護士に法律相談なさることをお勧めします。

回答者プロフィール

打越さく良

事務所は女性弁護士が5人。事務員さんも全員女性で、あたたかく笑いのたえないところに身をおいているので、過酷な事件にもめげずに立ち向かっている。離婚、DV事件、子どもの面会交流などを多数担当。また日弁連家事法制委員会,両性の平等委員会委員でもあり,家族法改正ロビイングにいそしむ。 著書に『改訂版Q&ADV事件の実務 法律相談から保護命令・離婚事件まで』(日本加除出版)