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法律

相談 17:夫の都合で別居して5年。離婚したいと言われそうです。

2013.09.02 Mon

15年前に結婚、15歳と12歳の子供がいます。結婚後は協議の上、夫が主に仕事優先、私は家庭優先で職場の短時間勤務制度など利用しながら円満に過ごしてきました。
ところが、今から8年前に夫の浮気が発覚し、今まで自分の時間も持てずに仕事も育児も精一杯頑張ってきた私は大変なショックで、彼をなかなか許すことができませんでした。
しかし当時まだ幼少期の子供を二人抱え、一度の浮気で離婚は短絡すぎるとの周りの勧めもあり、自分で改めて子供のために何が一番よいかを考え、罪を憎んで人を憎まず、とやり直せるように頑張ろうと思ったのですが、家族としてはともかく、夫婦としては難しい状態でした。
そして2009年に夫から一人での空間が欲しい、引っ越し先も伝えるし、育児も家事も今より手伝える、と言われ、私は離れたらもっと難しくなると訴えましたが、夫は隣の駅で一人暮らしをし始めました。その後、彼は子供たちにも説明せず、引っ越し先も伝えず、育児も家事も以前より手を出さなくなっていき、今は2児の母であるバツイチの女性と付き合っているようで、今年から彼女から結婚を迫られ、彼女の自宅付近に引っ越してしまいました。(彼のメールを見てしまいました)

夫はもともと出張も多く、週末には我が家で食事をしたり、平日も私の残業時には夕飯の支度をしたりしているし、我が家にいるときは夫婦げんかもなく、子供たちはまさかこんな状況になっているとは気付いていないようです。(仕事が忙しいのでどこかに事務所でも借りてそこで寝泊まりしていると思っているようです)
思春期の子供たちの心情を鑑み、またこれから教育費のかかる状況になるので、できればまだ離婚は避けたいのですが、彼から来年あたり離婚したいと仄めかされました。養育費などは法的な算定基準の通りもらえるとは思いますが、その後彼が再婚すると養育費は減額される可能性も高いと思います。数年前からもっと所得のある仕事も探していますがなかなか厳しいです。
今年で別居5年目になりますが、こちらに過失がなくても、彼から離婚を求められれば受けなくてはならないのでしょうか。
東京都・42歳・女性・会社員

回答

回答 17:打越さく良さん(弁護士)

ずいぶん身勝手な夫ですね。それでもお子さんたちの前で夫婦げんかもしないで過ごしていらっしゃる。ご立派です。
別居5年で離婚が認められてしまう、と誤解している方が少なくありません。96年の法制審議会の民法改正法律案要綱が、別居5年も離婚原因としたからでしょうか。でもこの民法改正案は、選択的夫婦別姓等の条項もあり反対にあって、未だ政府から法案提出もされておらず、別居5年は離婚原因になっていません。
ただ、家裁実務では別居が相当期間長期化していたら、婚姻関係が破たんしているとして、離婚請求を認める傾向にあります。しかし、何年別居していたら婚姻関係が破たんしていることになるのかは、一概にはいえません。

あなたの夫は、週末にはご自宅で食事をしたり、あなたの残業時には夕飯の支度をしているなど、ご家族と交流なさっています。こういう事情も考えると、そもそも破たんしているとはいえないのではないかと思えます。破たんしていない以上、夫が離婚請求しても、あなたが応じなければ、裁判所が離婚原因ありとは認めないようにも思えます。
仮に、破たんしているとしても、破たんの原因をつくった当事者(有責配偶者)からの離婚請求は原則として認められません。しかし、有責配偶者からの離婚請求でも例外的に容認される場合もあります。1 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、2 未成熟子が存在しない場合で、3 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められなければ、認められうることになります(最高裁大法廷昭和62年9月2日判決民集41巻6号1423頁)。

仮にあなたたちの婚姻が破たんしていると評価されても、その原因を作ったのは、二度も浮気をしているようなあなたの夫ですから、原則として夫からの離婚請求は認められません。10年の同居期間に比し、5年の別居は相当長期間ともいえないでしょう(まだ交流もあることを考えると、別居とも評価されないかもしれません)。そして、まだ15歳と12歳のお子さんたちがいらっしゃることを考えると、未成熟子が存在しない場合にもあたりません。あなたの収入や今後の生活見通しによっては、離婚が認められると苛酷と評価されうるでしょう。あなたの夫がその生活不安を払しょくするほどの十分なお金を払うといった事情があれば、苛酷ではないとも評価されるかもしれませんが、今のところそんな提案はないのですね。
具体的には、最寄りの弁護士会等の法律相談に赴かれて、相談してはいかがでしょうか。
弁護士 打越 さく良

回答者プロフィール

打越さく良

事務所は女性弁護士が5人。事務員さんも全員女性で、あたたかく笑いのたえないところに身をおいているので、過酷な事件にもめげずに立ち向かっている。離婚、DV事件、子どもの面会交流などを多数担当。また日弁連家事法制委員会,両性の平等委員会委員でもあり,家族法改正ロビイングにいそしむ。 著書に『改訂版Q&ADV事件の実務 法律相談から保護命令・離婚事件まで』(日本加除出版)