
声を上げた人々は何を経験するか
組織内のハラスメント、性差別、人種差別に対して声を上げた人々は何を経験するか――。
本書では、大学に苦情を訴えた学生や教授陣など60名以上への調査をもとに、組織・制度・権力がいかにして苦情を阻止し無力化するか、そのメカニズムを解き明かします。
著者のサラ・アーメッドはフェミニズム理論、クィア理論、人種理論などを専門とする独立研究者です(前著『フェミニスト・キルジョイ』が邦訳され日本でも話題となりました)。彼女はロンドン大学ゴールドスミス校の教授を務めていましたが、学内のハラスメント対応に抗議して2016年に大学教授職を辞しています。
著者の来歴や調査対象からもわかるとおり、本書は大学における事例に基づいて書かれています。しかし読んでいるうちに、ここに書かれていることは私も知っている、大学にかぎらずあらゆる組織で遭遇しうるものだ、と強く感じました。
進まない手続き、見かけだおしのポリシー、同僚からの警告、孤立、加害者とのお茶会、暴力のエスカレーション、「あなたの空想でしょう」、罪悪感、自分を信じられなくなること。そして連帯がもたらすエンパワーメント。
本書に収められた、膨大で痛みをともなう苦情の物語が伝えるのは、苦情とは、苦情を訴えた本人に「私がおかしいのだろうか?」と何度も自問させ、人生を変えてしまうほどの経験になりうるということ。そして、それらの物語の断片はとてもよく似ていて、そこから繰り返されてきた歴史を読み取り、組織や権力について学ぶことができるということです。
性加害やハラスメントについてのニュースが話題になるたびに、第三者が憶測から論評を加えしばしば二次加害に発展してしまう日本で、告発者の体験にじっと耳を澄ませ、丁寧にそして力強い説得力をもって掬いあげた本書が多くの人に読まれることを、そして苦情を述べる側が経験するさまざまなものごとを想像するきっかけとなることを願いつつ編集を担当しました。ぜひご一読いただきたいです。
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◆原著への賛辞多数!
「美しく書かれ、すっかり惹きこまれた。まさに今、私たちに必要なテキスト。」――アンジェラ・Y・デイヴィス
「感動的であり、連帯の源でもある。抗議し、変化のために闘う勇気を与えてくれる。」――ジル・クロージャー、教育社会学
「強くお薦めする。上級学部生から教員、専門家まで。」――『チョイス』誌
「大学における権力とその濫用についての、慎重かつ洗練された分析。」――バハラク・ユセフィ、カレッジ&リサーチ・ライブラリー
◆試し読み
「きっと届くに違いない呼びかけ――サラ・アーメッド著『苦情はいつも聴かれない』訳者解説」
https://www.webchikuma.jp/articles/-/3710
「フェミニズムという詩――サラ・アーメッド著『苦情はいつも聴かれない』訳者あとがき」
https://www.webchikuma.jp/articles/-/3731
◆書誌データ
書名 :苦情はいつも聴かれない
著者 :サラ・アーメッド
訳者 :竹内要江・飯田麻結
頁数 :560頁
刊行日:2024/11/22
出版社:筑摩書房
定価 :3190円(税込)
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