
WANAC第2期 第1回演習「研究計画書を書く」 受講レポート-1
上野先生から「ほぼ全員計画書はやり直し」と告げられた初回オリエンテーションから2週間、その日はついに到来した。第二回の上野ゼミは、1人3分で改訂版計画書をレビューし、上野先生から2分程度フィードバックを受ける場である。参加者26人、19時スタートで22時過ぎまで続く、中々タフな回となった。
また、ゼミ当日は、他のゼミ生の発表に対して感想や意見を整理した「レスカ」を全員分作成して提出する必要があるため、発表を全力で聞いて何か一つでも伝えられることを考えなければならない。そのため、私自身も当日までに研究計画書を見直す必要があった。
研究計画書の修正版を一週間で作成提出し、残り一週間で積み残した課題の手がかりを模索した。元々上野ゼミに志望動機と共に作成した研究計画書は、新興産業における職業的アイデンティティの危機と代替キャリア選択を取り扱った内容であった。これは修論の研究限界の継続研究として考えていたものであるが、改めてゼミを通じて一年間向き合うテーマとして、自分が一番伝えたい内容を長文でタイトルにしたためた。
「『個人の選択』や『家庭の事情』として表面的に理解されがちな専門職のキャリア選択の背景には、伝統的な男性の働き方を標準とみなす組織設計の限界が存在しており、この構造的な問題を明らかにする質的研究」。。。言いたいことは書いたが長すぎる。
しかし締め切りのため一旦提出した。同時に先行研究も模索した。限られた時間の中でフェミニズム組織論を手掛かりとして、研究タイトルを「キャリア選択に潜む構造的制約 ― 男性的働き方を前提とした組織設計の限界」とシンプルにするなど、開始時間までに準備を整えた。
当日、私は15番目の発表を担当した。序盤からゼミ参加者は様々な切り口での研究内容を発表し、独自性の高い内容ばかりであった。心の中で「みんなすごい」と思いつつ、それらの発表に対して上野先生は鋭いフィードバックを行っていた。当初は厳しい指摘を恐れていたが、実際は「鋭い」という表現が適切で、各発表者の計画課題を的確に読み取り問題点を指摘されていた。前回の上野ゼミに参加された先輩方からは「今年は優しい」等の場を和ませるコメントもあり、ゼミ全体のアップデートももうかがえる。
いよいよ自分の番となり、伝えたいことを時間内で発表しつつ、タイトルがうまくまとまっていないことと、先行研究で道筋がついていないことを伝えた。上野先生からは「めちゃくちゃ自分の持っている現場をそのまま研究対象にすればいいわけでしょ!」と、当事者研究をためらっていた自分に対して、ポジショナリティに配慮が必要であるものの、それによる独自性を強く推していただいた。また、漠然としていた先行研究について、具体的な文献や切り口の助言をいただけた。さらに、内藤先生からもご自身の論文の提供と誓約事項についての参考情報を即座にいただいた。
当日を迎えるまで稚拙な内容で落ち込むことを恐れていたが、結果としては当事者研究として踏み込む勇気をいただき、必要な知見も得られた。同期の皆さんからも様々な角度でのレスカによるフィードバックをもらえた。
改めてこの場に参加できた喜びと、1年間研究者として立ち向かう決意をするとともに、自分のレスカの質ももっと高めて貢献したいと思えた。次回までにアップデートを頑張りたい。行き詰まったら仲間のレスカを励みに乗り切りたいと思う。
WANAC第2期 第1回演習「研究計画書を書く」 受講レポート-2
WANAC第2期、いよいよ演習が始まりました。
第1回目は、2期受講生一人ひとり研究計画書を発表し、一人ひとりに上野先生がコメントを返してくださるというスタイルで行われました。総勢26名の研究計画書発表となりました。
研究計画書は、WANAC2期応募の際にも提出していますが、「書き直してもよい」ということであったため、オリエンテーション終了後に一部修正を加えて提出しました。今回の演習に先立って、次から次へと提出されていく2期受講生の研究計画。提出されるたびに読ませていただいたのですが、あまりの完成度の高さから、自分の稚拙な研究計画書の内容に落ち込みました。私にとって初めての研究計画であり論文執筆でもあるため、研究に関する作法や知識の不足は否めません。いますぐにこの差は埋められない。私は学ぶために参加しているのだから!と気持ちを切り替えました。
同期の研究計画書には、初めて目にする言葉、身を置いたことがない世界の課題がずらりと記されていました。読みながら幾度となく立ち止まり、わからない言葉を検索して考え、もう一度読んでみる。そんなことを繰り返しながら1週間を過ごし、当日を迎えました。
当日の発表はひとり3分。上野先生からのコメント2分。3時間超えの演習となりました。同期メンバーの発表や上野先生のコメントを聞きながら、並行してレスカも書き留めていく。聴いて、考えて、書いて、また聴いて。受講生のみなさんは、流暢に自分の計画について発表をしていきます。「上手にまとめているな」と感心しながら聞いていました。みな伝えたい気持ちが強く、3分という時間で納めることはなかなか難しいようでしたが、司会進行担当の方のテキパキとした進行により、演習はどんどん進んでいきました。
上野先生のコメントからは、お忙しい中、事前に一人ひとりの研究計画書に目を通してくださっていることが伝わってきました。先生からのコメントで悩んでいた点がクリアになったり、内容の祖語に気付いたり、研究課題を捉える視点が変わった受講生の方もいたのではないでしょうか。上野先生の核心を突くアドバイスに、新しい気付きを得て、見通しが持てるようになった受講生がたくさんいたように思います。私もそのうちの一人でした。上野先生による自分以外の受講生へのアドバイスからも、研究の作法や調査方法、問いと調査方法の整合性など、研究をする上で必要な知識や視点を学ぶことができました。
私の発表は後半でした。3分という時間内で、伝えたいことを十分伝えられなかった気がします。事前に練習して臨みましたが、緊張のあまり、頭が真っ白になってしまいました。それでも、事前に研究計画書を読んでくださっていた上野先生からは、「研究の問いが明確になっているのだから、テーマを変えて、そこにフォーカスをしたらよい」というアドバイスをいただきました。このアドバイスは、「なぜ自分が研究をしようと思ったのか」を思い出すきっかけになりました。
私は、ある問いを長期にわたって持ち続けてきました。その問いの答えを得るためにはどうしたらよいのか。改善を図るために、社会に知ってもらうために、どういう方法があるのだろうかと考えてきました。その結果、「研究」という方法にたどり着きましたが、私が卒業した学部には卒業論文がありませんでした。そのため、研究や論文執筆に関する知識も経験もなく、学ぶために大学院への進学を決意し、今に至っています。ここまでたどり着くまで抱き続けてきた問いを、「研究は新しい知見を見つけること」という思いにとらわれ、見失っていたことに気付きました。
さらに、「使う言葉をきちんと選んで使うこと」も教えていただきました。様々な先行研究を読む中で、普通に使われていた言葉であったために、何も考えずにそのまま使っていました。しかし、正しい表現ではないことを知り驚きました。研究を進めるにあたり、使う言葉が正しいか否か、言葉の定義・概念を押さえることの重要性を教えていただきました。また、過去に上野先生ご自身が経験された出来事のお話は、自分が研究したいテーマは、私一人の問いではなく、きっと誰かが知りたいこと、誰かの役に立つはず。という思いを抱かせてくれました。
3時間超の間、休憩は5分とかなりハードな時間を過ごしましたが、集中して過ごす時間は、あっという間に過ぎていきました。
演習終了後は、ほっとする間もなく続々と同期メンバーからレスカが届き始めます。レスカとは、一人ひとりの研究計画へのコメントが書かれたレスポンスカードのことです。研究に対する感想や知見、アドバイス、疑問などがぎっしり書き込まれていました。ご自身の専門とは違う分野の研究にもかかわらず、しっかり感想や意見を述べられるそのコメント力に感銘を受けました。
届くレスカを読むのが楽しくて、寝ることも忘れて読みふけってしまいました。読みながら、自分のコメント力のなさが申し訳なく思えてきました。上野先生は「1年後には、みんなコメント力が上がる」とお話されていましたが…。1年後にはメンバーに貢献できるレスカが書けるように努力していこう!そう決意しました。
このWANACでは、大学院や職場など、同じ専門領域の人たちが集まる場では決して得られることがないであろう、貴重な学びを得られる場であることを実感しています。同時に、新しい分野への興味関心を広げてくれる機会でもあると思います。WANACに参加できたこと、上野先生や同期のみなさんに出会えたことに感謝し、これからの1年を大切に過ごしていきたいと思います。
まずは、研究の「航海図」である研究計画書を、上野先生と受講生みなさんのアドバイスを参考に再考していこうと思います。
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