WANAC第2期 第2回演習「研究計画書を書く・リベンジ」 受講レポート 2025,06,23
今回は研究方法を学ぶためのお手本となる論文・学術書の勉強会+研究計画書のリベンジを行いました。
論文・学術書の勉強会では、方法を学ぶはずが、いつの間にやら論文の内容に引き込まれ…と右往左往。
上野先生の指南になんとか食らいついていこうと、支え合い学び合いを続けています。
次回7月は静岡で「うえの式KJ法の合宿」です。ついにゼミ合宿が実現します。
情報発信者に仲間入りできるよう頑張ります!!

レポート-1
戦の世 80年目の今日のひに ジェンダー語るる しんかのちゃー ゆがふの世や いちまでぃんまでぃん
 6月23日第3回は、第1部「先行研究分析」、第2部「研究計画リベンジ編」のラインナップで、私は先行研究分析で、上野先生のキラーパスに打ちぬかれた一人です。当日の臨場感と発表者の不安感をご想像しながら、お読みいただければ幸いです。
 AC第2期の皆さんは開始時間前にスタンバイされ、司会からの説明の後「まだ3回なの?疲れた」上野先生の弱気な発言ですが、目の奥がキラリとひかり、今日もしっかりコメントします、オーラが見えました。それを裏付けるように、先行研究報告の際には「皆読んでいるので『要約』でなく、あなたはこの論文で『何を学んだの?』」と上野先生のキラーパスが放たれ、瞬間、場が凍り付き、私は息をのみ、うわーやばいと感じたのは、全員だったと思います。
 最初は『職業婦人の歴史社会学』をAさんが報告され、ご自身の言説分析のお手本となる本書を丁寧に読み込まれた報告でした。「これはお手本になる学位論文で、学位論文なら、このレベルを書いてほしい」の弁に「それを私たちに、お望みですか」と私の顔に書いてあったと思います。論文を主指導や副査の視点で「方法論に照らして『適切かどうか』の判断」のコメントに、先行研究分析とはこのような視点が必要なのだ、査読者の視点を感じました。
 次は私の『東大闘争の語り――社会運動の予示と戦略――』です。これまで自身が、関心を寄せたことのない領域であり、泥臭い「芋づる式に先行研究を読む」で、気がつくとPC前に5時間おり、ドライアイが悪化したことは言うまでもありません。先生からは、この分厚い語りの記述が、多様であった社会運動は「一般解できない」と納得させた事に、皆「そのような結果を書いてもいいんだ」と驚きと感嘆の様子でした。
 Bさんは「男子生徒の出現で女子高生の外見はどう変わったか」を報告され、大変わかりやすく簡潔な説明で、ご自身の研究につながる「アクセシビリティ」の重要性と客観視比較の見事さを述べられ、方法論をコンパクトにまとめていました。先生は「この論文の手柄は『インタビューをしなかった』」ことであり、教師へのインタビューをせず、判定可能、観察可能なものに「着目」したことを説明されました。 最後にCさん『幼児の性自認―幼稚園児はどうやって性別に出会うのか―』は、ボリュームがあり、まとめるのが大変だったと思います。先生から、本書はまず初めに「明確な問が立った」上で、「概念の定義と理論の裏付け」があり、筆者は研究方法と対象者をふまえ、最初から「研究の解明と限界を認識」していること、使える概念を選択したことが述べられました。
 質問では、先行研究を進める中で自分の問いが変化してゆくのはいいのかに、「問は変化するもの、新しく何度も建て直せばいい」とアドバイスがあり、質的調査と量的調査で、質的調査は仮説を立てないほうがいいのかに、仮説検証型と仮説生成型を示されました。インタビューで仮説と異なる現状に困惑しているには「あなたの仮説が崩されてゆく」(それはある意味)楽しいですねのコメントは、学生の成長を願う上野教授のお顔でした。
 第2部「研究計画リベンジ編」は6人です。先生からは「『尊厳』のような抽象度の高い問をどのように測定するのか」、「抽象度の高い問からは抽象度の高い解」とのコメントでした。また2人目の方には、組合における「組織分析」が必要ではないか、仮説生成型でまずは既存のデータ分析と(組合に関する)先行研究を利用してみてはとのアドバイスでした。先生から当事者研究に関して「先行研究の(十分な)数」、「私一人でも研究になる」、「他人の分析よりも自分の分析」、モデル化を目指すのアドバイスがありました。4人目の方には「問の反転がある」、「DVプログラムの効果なら、効果の測定が必要」代弁者ではない立場で問をたてる等のアドバイスでした。5人目の方には、データの確認、対象者へのアクセス性、多様性の統制、「戦略的サンプリング」「外国と日本の比較→比較すると日本の独自性がでる」とのアドバイスでした。最後の方には、タイトル変更は「すごくいい」、問いに対応するサンプルを増やす、それ以外は少なくとも良い、夫婦の性別役割分担の仕切り直し→在宅障がい者における「18歳の壁」→母親就労継続について、「問いが明確になった」などをコメントされました。上野先生との一問一答の中で、自らの「問が研ぎ澄まされる」「問の未熟さや方法論の不十分さ」の指摘には、あぁそうか、それなんです!と研究の前進につながると感じました。
 いかがだったでしょうか、WANAC第2期第3回のレポート、これにて終了です。またの機会にお目にかかる日まで、私の精進は続きます。みんな、頑張ろう!

レポート-2
 今回も19時~22時過ぎまで、受講生の発表と上野先生のコメントおよび質疑応答等、刺激的で濃厚な学びの時間となった。月曜の夜からこんなに頑張った自分を褒めてあげたい。前半は調査方法について学び、後半は研究計画書のリベンジを行った。
〈前半:調査方法について学んだこと〉
 事前に指定された4本の文献を読んだ。いずれのテーマもオリジナリティがあり新鮮で面白く、視点の鋭さやセンスの良さに惹きつけられた(調査方法を学ぶという本来の目的を忘れるほど)。問いの立て方の鮮やかさには唸るばかりで、調査の進め方に至っては、「ここまでやらないといけないのか」とただただ圧倒された。
 濵貴子著『職業婦人の歴史社会学』では、計量分析(実証的アプローチ)から言説分析(社会構築主義的アプローチ)への積み重ねによりこれでもかというほど説得力が生まれると実感した。はじめに問題の所在を明らかにすること、方法においては、なぜその対象を採り上げるのかという根拠を徹底的・網羅的に論じなければならないと学んだ。
 大滝世津子著『幼児の性自認—幼稚園児はどうやって性別に出会うのかー』においては、調査の前提として、概念の定義や理論の構築といった下準備を緻密に行うことの大切さを学んだ。採択する根拠をこれでもかというほど理論詰めにして「そうするしかない」と思わせるところまで持っていく。問いが明らかに立っているので「何を明らかにでき、何を明らかにできないのか」、はじめから自覚的にはっきり腑分けできるのだと先生から説明を受けた。膨大な先行研究の流れを止めず新たな知見を見出す凄さに圧倒される。
 小杉亮子著『東大闘争の語り』では、インタビュー調査によるサンプリングを戦略的に行い、網羅性があることで説得力が生まれると学んだ。過去の経験ではなく、その後のライフヒストリーを聴くことで、そのひとの長いサバイブ体験が語られ、それぞれの人生に迫ることができるというのはとても興味深い。当事者研究を考えている自分にとっても、大変参考になった。
 白井裕子著『男子生徒の出現で女子高生の外見はどう変わったか』においては、インタビューではなく、アンケートやヴィジュアル比較分析のような判定可能なもの・観察可能なものを扱う手法で、とても鮮やかに結果が出せることを学んだ。インタビューを調査の基本のように考えていた自分にとって、「この研究の手柄はインタビューしなかったこと」「言葉はごまかしがきく」という上野先生のコメントは目から鱗であった。
〈後半:研究計画書のリベンジ〉
 6名のメンバーが研究計画書のリベンジ発表を行った。各メンバーの発表と上野先生のコメントを一言も聞き逃すまいと、全神経を集中させた。自分にとっては馴染みのない、高度な内容や専門用語も多々あるが、調査方法や研究法としてはどれも参考になり、大変興味深かった。自身の立ち位置や関わる姿勢を顧みながら自己反省的な意味も含めて研究に取り組まれるという勇気、しっかりしたデータがある強みを活かした分析に取り組まれる姿勢、アクセシビリティに限界がある中での問いの立て方、調査対象の多様性を担保して戦略的に選ぶこと、社会背景・福祉制度と連動して生じる問題に対して、ジェンダーの視点から問いを立てることなど。
〈全体の感想〉
私は先行研究にいろいろ当たっていると、どんどん新しい問いが出てきてしまい、気がつくとはじめと違うテーマの論文を読んでいることがよくある。過去には、指導教員からテーマがずれてしまうのはよくないと言われ、これは自分の欠点だと思っていた。しかし、今回、上野先生から「問いは何度も立てて良い」とポジティブにコメントいただき、とても勇気づけられ、嬉しかった。また、今回は調査方法を学ぶ回であったが、参考文献は単なるハウツーではなく、4本とも実際の学位論文に基づくものであり、研究に説得力を持たせるためにはここまで徹底的、網羅的に概念を定義し根拠を論じなければならないということを、具体的にこれでもか、これでもかというほど私たちに教えてくれた。先生の私たちへの「愛」を深く感じるとともに、それに応えられるように精進していきたい。