いきなりの憲法解釈変更で集団自衛権を認めた閣議決定、国民よりも先にアメリカと「お約束」した戦争法案を怒号のなかでごまかしての強行採決、、、戦争法案をめぐる一連の動きは、その中身もさることながら、民主主義のルールを踏みにじる手続きの連続に、空恐ろしい気持ちにさせられます。もちろん、それに抗する、SEALDsの若い人たちのカッコいい運動、それに続く全国でのさまざまな動きは、そんな政治を許すわけにはいかない、と私たちを力づけてくれていますが。
女性たちは戦後ずっと、戦争に反対し平和を求める運動に少なからず関わってきました。その際、「わが子を二度と戦場に送らない」と、母として・女性としてのジェンダー役割が強調されてきたこともしばしばあります。
本書では、深いジェンダー理解に裏打ちされながら、単に「女性だから」ではない、傷つきやすい(ヴァルネラブルな)身体を持つ人間の具体的な生の経験から、つまり「ケアの倫理」から、反暴力・反戦争の思想が紡ぎだされます。わが子・わが国を超えた、グローバルな正義を求めつつ、しかし、身体のリアリティに根ざした社会の構想が語られます。
一見ちょっと難しいと感じるかもしれませんが、しばらく読み進めていくとぐいぐいとひきつけられ、フェミニズムの思惟はここまで到達した!と感動するはず。(牟田和恵)
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