今回は、弁護団の高見より、聖マリアンナ医科大学に対する弁護団の取り組みについてご報告します。

1 第三者委員会による調査報告書
 2020年1月17日、聖マリアンナ医科大学は第三者委員会による調査報告書を公表しました。調査報告書は、調査対象である2015年度から2018年度の一般入学試験について、「A元入試委員長ら4名による、性別・現浪区分という属性による一律の差別的取扱いが行われたものと認めざるを得ない」「不合理な供述・弁解をしていること等からすれば、A元入試委員長らは、調査対象年度の一般入学試験採点当時において、性別・現浪区分という属性を理由とする一律の差別的取扱いを認識していたと言わざるを得ない」と結論付けています。
 この調査報告書の内容は、とてもショッキングなものでした。受験生の志願票・調査票をひとつひとつ個別に精査するのではなく、女性や多数回受験者が機械的に一律不利益に扱われていたというのです。


2 弁護団ではご相談を受け付けています
 医師になって病気の人を救いたいという思いから一生懸命勉強し、その思いを志願票に書いても全く考慮されず、性別等の自分では変更できない属性を理由に差別を受けることの悔しさ、悲しさは、言葉ではとても言い表せないものです。
 聖マリアンナ医科大学は、ホームページにおいて、第三者委員会による調査報告書を受け、2015年度から2018年度の第2次試験受験者のうち、同大学に入学した者、2次試験合格者のうち入学を辞退した者を除くすべての受験者を対象に、入学検定料相当額を返還すると述べています。
 公正な試験であったならば、医師になっていたはずの方もいるでしょう。差別的な取扱いを受け、生き方、人生の変更を余儀なくされたことは、本来、慰謝料では解決できず、ましてや入学検定料相当額の返還では解決できない問題です。
 現在、弁護団では聖マリアンナ医科大学を受験された方からのご相談も受け付けています。ご相談申込フォームからご連絡ください。

3 弁護団による声明
 聖マリアンナ医科大学はホームページで、「本学といたしましては、一律機械的に評価を行ったとは認識しておりませんが、意図的ではないにせよ、属性による評価の差異が生じ、一部受験者の入試結果に影響を及ぼした可能性があったとの認識に至りました」という見解を示しています。
 この見解は、大学の組織的関与を否定するもので、差別の問題意識に欠ける無責任なものであると言わざるを得ません。
 弁護団では、近日中に声明を発表する予定です。声明の内容は弁護団ホームページからご覧ください。
 また、1月21日、弁護団は、当弁護団共同代表で参議院議員の打越さく良事務所において、文科省へのヒアリングに参加しました。聖マリアンナ医科大学に関する問題等につき、文科省職員からヒアリングするとともに、差別が許されないというメッセージをきちんと発信して欲しいことなど弁護団の要望を伝えました。

2020年1月21日 文科省へのヒアリング

4 女性が生きやすい社会は男性も生きやすい
 女性医師の出産、育児、家事等に伴う短時間勤務への変更、休職、離職への対応が困難であることから一定数の男性医師の確保が必要であるとの理由が、入試における男女差別につながったと、聖マリアンナ医科大学の第三者委員会の調査報告書でも指摘されています。
 育児、家事の分担の問題は家族だけでなく、「育児、家事は女性の仕事」という社会の意識の問題でもあります。最近は、育児や家事に協力的な男性が増え、むしろ積極的に育児や家事をしたいという男性も多いのではないでしょうか。医療現場に限らず、男性も子育てや家事を通して家族と過ごす時間を持てるような働き方ができれば、女性の休職、離職も減るはずです。女性にとっても男性にとっても働きやすく、生きやすい社会となるよう、意識の改革が求められています。

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