<女の本屋より>2020年5月16日、立教大学主催・WAN共催のシンポジウム「フェミニズムが変えたこと、変えなかったこと、そしてこれから変えること」が開催されるはずでしたが、新型コロナの感染拡大によって、延期となってしまいました。(延期のお知らせはこちらから。)
すでにお申し込みも350名ほどいただいており、大変残念ですが、ここ「女の本屋」コーナーでは、日を改めての開催に備えて、登壇予定だった講師の方々の著書をシリーズで取り上げてまいります。
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書 名 明日は生きてないかもしれない‥‥‥という自由
著 者 田中美津
発行所 インパクト出版会
発行日 2019年11月11日
定 価 1980円(税込)
いやな男なんかに、もちろんお尻触られたくない。でも好きな男が触りたいと思うお尻は欲しい(笑)」(『明日は生きてないかもしれない・・・・・・という自由』P059より
嫌な感じにどきっとした。当たり前すぎる。当たり前すぎることなのに、それを発言することを躊躇する時期があったからだ。
私は2017年末、#MeTooに出会うまで、フェミニズムという言葉を全く知らなかった。意味を知らなかったどころではない、本当にその言葉自体を知らなかった。
フェミニズムに出会って本当に私は救われた。日本は男女が全然平等じゃないという事実を知って、自分の生きづらさやもやもやのほとんどの原因が判明したからだ。
そこから2年間、世の中にある女性差別について発信をしていくようになった。
一方で、特に自分で決めたわけでもルールになっているわけでもないのに、どこかで本来の自分を少しセーブしている自分もいた。
美津さんの言葉、「好きな男が触りたいと思うお尻が欲しい!」というような発言をなんとなく気軽にできなくなってしまっていた。
とはいえ私は思ったことを口にしたい性格でもあるので、時々Twitterなどで「こういうセックスがしたい!」と呟くことはある。だけどなんとなく、「いいのかな。」「なんか言われるかな。」という罪悪感のようなものとセットだった。
そして実際に言われるのである。
「#KuToo運動をしているようなあなたが『好きなセックスの話』をするなんてフェミニズムのイメージが悪くなるからやめてください」と。フェミニストではない人に。
こんなクソみたいなアドバイスも嫌だったが、何よりも嫌だったのはそんな自分を責める自分がいたことだった。少し控えよう、と思っていたのだった。
美津さんの本を読み進めるうちに、ポロポロと私の中にある鎧が剥がれていった。
そうだ、私はフェミニストである前に私だったのだ。
世間やアンチフェミニストが勝手に作っている「フェミニスト=正しい人」、みたいな印象操作にまんまとやられていたのは私だった。
フェミニズムに出会って救われたが、この本を読んで第二段階目の自由が降ってきたような気持ち。私はもう一度解放された。
ちなみに、P121の「リブは『男は敵だ』と煽っているとよく報じられました。そんなこと一度だって言ったことないのに」という一文には笑ってしまった。#KuTooでも全く同じことを死ぬほど言われ続けているからだ。
進んでいるのかいないのかよくわからなくなる女性の解放運動。
だけど、「私は私として生きたい」という思いからフェミニズムにたどり着いたのだった、という原点を思い出させてくれる一冊だった。
帯には竹信三恵子さんから「田中美津は人を自由にする力を放射してる」とあり、あとがきに美津さんは、「この本からもそれ、出てたらいいなぁ」と書かれていましたが、バッチリ放射されてたと思う。ぜひ多くの人が放射されて欲しい。私という自由を取り戻すために。
◆石川優実(いしかわ・ゆみ)
1987年生まれ、愛知県出身。俳優・ライター・アクティビスト。2005年に芸能界入り。
2017年末に芸能界で経験した性暴力を#MeTooし、話題に。それ以降ジェンダー平等を目指し活動。2019年、職場で女性のみにヒールやパンプスを義務付けることは性差別であるとし、「#KuToo」運動を展開。厚生労働省へ署名を提出し、世界中のニュースで取り上げられる。
2019年10月、英BBCが選ぶ世界の人々に影響を与えた「100 Women」に選出。2019年11月に初の著書『#KuTooーー靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館)を出版。「2019年新語・流行語大賞トップ10」に#KuTooがノミネート。
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