
判決後、記者会見にのぞむ弁護団
去る2022年(令和4年)5月19日、等順天堂大学に対する損害賠償請求事件の判決が言い渡されました。これについては前回のエッセイ(https://wan.or.jp/article/show/10082#gsc.tab=0)で書きましたが、今日はそれ以後のお話しを。
*判決の確定
弁護団で原告の皆さんに判決の内容について説明したところ、控訴の希望がなかったことから、本判決については控訴しないこととなりました。被告である順天堂大学も控訴しなかったととから、2022年(令和4年)6月6日の経過をもって、同判決は確定しました。
これを受け、順天堂大学は、原告の皆さんに対し、判決が定めた金額(13名の原告それぞれへの受験一年あたり30万円の慰謝料(すなわち3回受験した原告であれば90万円)と実費(受験料、交通費、宿泊費)、そしてこれに支払日までの遅延損害金を加えた金額を、6月末に支払う予定です。
*順天堂大学への申し入れ
さらに、当弁護団は、昨日、順天堂大学に対して申し入れ文書を発送しました。
これは、原告の皆さんの代理人という立場ではなく、「弁護団」としてです。
すなわち、今回の順天堂大学に対する判決で直接救済を受けることができるのは、裁判に参加した13名の原告のみですが、
この判決がはっきりさせたのは、
【順天堂大学は、2008年度(平成20年度)以降2018年度(平成30年度)までに同大学を受験した全ての女性受験生に対して損害賠償義務を負う】
ということです。
ですが、訴訟に原告として参加する負担は、訴訟において認められる損害賠償額に比べて遙かに大きいといえます。多くの元受験生たちは、現在も医師を目指して受験勉強に励んでいる、医大生として研鑽を積んでいる、実際に医師として稼働している、医師への道を断念して他の学業に励むなど、様々な事情から裁判に参加することができませんでした。多くの当事者にとって、実際に原告として裁判に参加することのハードルは、極めて高いと言わざるを得ません。間違いなく順天堂大学に支払いを求める権利があるのに裁判を起こさなければ救済を受けられないとすれば、このような様々な事情を持つ元受験生たちにとって大変酷ではないでしょうか。
そして、今回の裁判の原告は13名しかおらず、支払総額も、遅延損害金を含めても約917万円に過ぎません。間違いなく支払い義務を負っているにも関わらず、裁判さえ起こされなければこのまま支払をしなくて済むとすれば、順天堂大学の【逃げ得】を許す格好となってしまいます。また、懲罰的損害賠償の概念があるアメリカなどであれば、原告がたとえ一人であってもこのような金額では済まないでしょう。順天堂大学を含めた私立大学も、学校教育法により設置された公器として、果たすべき社会的責任があるはずです。順天堂貴大学は、訴訟提起することのできない全ての元受験生に対して、本訴訟で確認された損害賠償義務を自ら率先して履行すべきと考えます。
そこで、当弁護団は、昨日、順天堂大学に対して、
①2008年度(平成20年度)から2018年度(平成30年度)までに順天堂大学を受験した全女性受験生を対象とした損害賠償対応窓口を設置して、これを広く周知すること
②窓口に申請のあった全ての元女性受験生に対し(ア)入学検定料相当額、及び(イ)慰謝料30万円の賠償を行う
ことを提案し、その実施を強く求める通知を発送しました。
順天堂大学が、今回の女性受験生差別入試を真に反省し、これまでの受験生、これから受験しようとする若い方々、そしてこの一連の女性差別に傷付き、憤った多くの人々の思いを受け止め、大学の社会的責任を果たすべく、私たち弁護団の提案に応じてくれることを心から願っています。
皆様も是非、順天堂大学に対して、弁護団の提案に応じるよう、求めていただけたらと思います。
*関連事件のこれから
なお、他の訴訟の進行についてですが、聖マリアンナ医科大学に対する損害賠償請求訴訟については、訴訟の争点を整理する手続が続いており、明日6月27日にも裁判期日があります。判決がでるのはまだ先になりそうです。東京医科大学については、9月9日午後1時10分から東京地裁601号法廷で、判決が言い渡されます。こちらも是非多くの皆様に傍聴による応援をお願いしたく存じます。
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