■半数以上の原告が控訴します■
前回のエッセイ(https://wan.or.jp/article/show/10237#gsc.tab=0)もお伝えしたとおり、2022年9月9日、東京地方裁判所において、東京医科大学に対する損害賠償請求訴訟の判決がありました。
弁護団では、この2週間、判決について原告の皆さんにご説明させていただくZoomでの報告会を開くなどして、本判決に対して控訴するのかどうかを検討してきました。報告会でも、判決には到底納得できないという声が多く聞かれました。
結果、判決時28人であった原告のうち、半数以上の方が控訴することになりました。
■女性差別が正面から捉えられていない〜低すぎる受験慰謝料〜■
判決についての弁護団のコメントは、弁護団のサイトからお読みいただくことができます。
少し長いですが、よろしければ是非御一読ください。
前回も書きましたが、やはり本判決の大きな問題点は、
属性による点数調整(属性調整)について性別による不合理な差別的取扱いを禁止した教育基本法4条1項及び憲法14条1項の趣旨に反する」
「『公正かつ妥当な方法』(大学設置基準2条の2)による入学者の選抜とはいえない」
としながらも、属性調整自体が違法であるとは明言せず、
「属性調整を公表せずに受験させたこと」
をもって(受験校選択の自由を侵害する)不法行為にあたると述べるにとどまったことだと思います。
しかし、原告らは、単に正しい情報を与えられず受験校選択の自由を奪われたというだけではありません。「女性」という性別によって差別をされたのです。女性差別入試に参加させるということは、受験生の人格自体を蔑ろにするものであり、その尊厳を踏みにじるものです。
この入試の本質である女性差別が判決において正面から捉えられていれば、受験慰謝料が一年度当たり20万円などということはなかったのではないでしょうか。もし、それでもなお20万円なのだとすれば、それは、我が国の司法が女性差別を軽視しすぎていることの証左だと言わざるを得ません。
判決がこのように属性調整自体ではなく「属性調整を公表せずに受験させたこと」を不法行為としたことが、慰謝料額や、後に述べるその他の損害についての判断など、判決の様々なところに影響していると感じます。
■不当に不合格となった受験生について■
不合格慰謝料も同様です。
本来合格して然るべきだったにもかかわらず、文字通り女性であったというだけで不合格とされた原告たちは、これにより、進学先を遠方の大学にせざるを得なかったり、必要のなかった浪人生活を強いられたり、センター試験でマークミスがあったのではとの不安を国立二次試験の発表まで抱き続けなければならなかったりと、それぞれ、女性というだけで具体的に大きな不利益を受けました。
慰謝料がたった150万円というのは、到底肯首できません。
また、判決は、東京医科大学に不合格とされたがために生じた浪人中の予備校代、浪人せずにその年入学していれば一年早く医師になれたのだからその分得られたはずの医師としての一年分の収入について、原告の損害賠償請求を認めませんでした。
さらに、東京医大に進学できていれば自宅から通うことができたが、不当に不合格とされたことで遠方の医大への進学を余儀なくされ、多額の余計な出費が生じた原告についても、その出費の請求を認めませんでした。
裁判所は、原告らは女性差別が分かっていれば東京医科大を受験しなかったというのだから、東京医科大に入学していれば生じなかった損害というのは観念できないだろうという判断のようですが、これは本当におかしいと思います。
先にも述べたとおり、そもそも女性差別自体が許されないのですから、女性差別がなければ生じなかった損害は、当然賠償されるべきです。
東京医科大は、受験生の人生を大きく振り回したのですから、慰謝料のみならず、生じた経済的損害についてもきちんと責任を負うべきでしょう。
■控訴審に求めること■
ということで、28人いた原告のうち、半数以上が控訴するという決断をしました。
一連の医学部入試における女性差別発覚後、巷では、一部、女性差別は仕方のないことだ、必要悪なのだ、という言説や、大学側が男性を優遇することを明示していれば問題がなかったのだという意見も聞かれましたが、決してそのような問題ではないはずです。
控訴審には、女性差別はそれ自体決して許されない、女性差別は重大な不法行為なのだということをはっきり社会に示してほしいと思います。
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2022.09.26 Mon
カテゴリー:シリーズ / 女子受験生への応援歌