働けない日韓の女たちへ

働く意志も能力もあるのに、機会も環境も与えられない女性たち。出産・育児がキャリアの障害になる社会で、女性たちは母になることを果敢に放棄する――

韓国では、結婚して子どもを産んだあとも勉学や仕事に励む女性たちは、「欲が深い」「図太い」などと言われてしまいます。大学進学率は女子が男子を追い越し、高学歴女性が多数になった今も、女性は就職・就業・昇進すべてにおいて男性より不利な状況に置かれています。そして、出産や育児のため一旦キャリア断絶した女性は、低賃金の非正規雇用でしか再就職の道がありません。その結果が、超少子化に表れています。

本書は、韓国の女性たちが労働市場から疎外される理由を解き明かし、機会の平等性をどのように実現できるのかを、スウェーデン、アメリカの政策・制度をヒントに考えます。

著者のチェ・ソンウンさんは行政学の専門家。大田世宗研究院の責任研究委員として、女性、子ども、少子化政策の課題を研究し、提言を行っています。仕事と子育ての両立に奮闘する一人の母親でもあります。

働きたいし、子どもも育てたい。そんな当たり前の願いが尊重される社会になってほしい。誰もが学んだことを生かせる社会であってほしい。そのためには、問題を可視化し、変革のための社会的合意を形成しなければならない。冷静な分析の合間にあふれ出る、働く母親としてのリアルな心情が胸をつきます。

共通した問題を抱える韓国と日本。互いに学び合い、エンパワーメントしていく一冊です。

世界思想社Webサイトから「プロローグ」をお読みいただけます。
https://web.sekaishisosha.jp/posts/8668

◆目次
プロローグ 図太い女の社会
1 「平等な競争」という幻想
2 女性に「学歴プレミアム」はあるか
3 母になるのは拒否します
4 より多くの女性が働けるように
エピローグ 機会の平等を論じる
補論 日本の「働けない女たち」へ(チェ・ソンウン)
解説 手を取り合える日韓の女性たち(中野円佳)
訳者あとがき
ブックガイド/参考文献

◆書誌データ
書名 : 『働きたいのに働けない私たち』
著者 :チェ・ソンウン 著/小山内園子 訳
頁数 :160頁
刊行日:2025/05/20
出版社:世界思想社
定価 :1,980円(税込)

働きたいのに働けない私たち

著者:チェ・ソンウン

世界思想社( 2025/05/20 )