新しい連載がスタートします!

医学部の入学試験をめぐる男女不平等に立ち向かう女子受験生を応援する弁護団が結成されました。弁護団グループの方にリレー形式で、月に一回程度、臨機応変にエッセイを書いていただくことになりました。事実経過や法律論ももちろんですが、闘いに立ち上がった若い女性の怒りや思いも。乞うご期待!!  WAN編集部
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 医学部入試における女性差別対策弁護団のリレーエッセイをスタートさせていただくことになりました。弁護団共同代表の私(打越)がトップバッターです。


 2018年8月2日、東京医科大学で女性合格者の割合を3割以下に抑えるために女性を一律に減点していたと報じられた際、私は息を飲みました。その後12月に公表された文科省の最終まとめでは、同大学だけではなく、順天堂大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学も、性別による不利益な取扱をした、ないし、その疑いがあることが明らかにされています。この社会には女性差別が根強く残っている。そのことは知っていたつもりです。しかし、それでも、大学入試のようなところでは、客観的に点数で判断されているはず、そこで性差別はさすがにない。それが甘い思い込みであったことを悟ったとき、ずしんと痛みを感じました。でも、性差別により不合格になった女性たちの感じた痛みは私の受けたものの比ではないでしょう。頑張って勉強したら、それが報われる、私はそんな信念のもとで、しゃにむに頑張って、大学入試や司法試験を突破してきました。それなのに、もし女性であるがゆえ得点操作をされて不合格となっていたとしたら…。想像を絶します。
 誰もがショックを受けるはず…と思っていたら、そうでもない。「そんなの昔からあった。文科省のまとめ以上にあるはず。でも、医療の現場から仕方ないのでは」という醒めた声もちらほらききます。そうやって性差別のある社会で適応するのが、「おとな」であるかのように。でも、そんなふうに「おとな」たちが諦めていたから、こんなふうに若い人たちを傷つけてしまう社会であり続けたのではないか。

 諦めずに、声をあげるのは、大変です。私が司法研修所の53期修習生だったころ(1999年から2000年)、「検察には女性枠がある」ということが公然と言われてきました。
 女性枠とは、「司法修習生の検察官任用者を選考する過程において、女性の司法修習生の任用を原則として司法研修所の各クラスで1人に限り、例外的に2人とする、明示又は黙示の取り決め、申し合わせ又は慣行」です。それは女性差別ではないか。
 私たち53期修習生の有志で、撤廃を求めて運動を展開しました(日本弁護士連合会「森山法務大臣に対する検察官任命に関する要望書」参照https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2001/2001_21.html )。
 その後女性の検察官任用者は増え、検察官に占める女性の割合は、23.5%(平成29年3月現在)で、裁判官(21.3%、平成28年12月現在)、弁護士18.4%(平成28年9月現在)よりも多いほどです(「男女共同参画白書 平成30年版」http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-01-10.html)。

 私たちの運動も貢献できたのではないか、と今ならドヤ顔で言えますが、声をあげるとき、少なくとも私は勇気がいりました。正しいことを言うのであっても、もしそのように物言うことで研修所でにらまれ、法曹になるには合格しなくてはならない二回試験を通れなかったらどうしよう、と…。そんなことで怯えていて、人権擁護、差別禁止のために奔走する弁護士になれるか、と自分を鼓舞したものの、内心お恥ずかしながら怯えたものです。ですから、医療の世界で生きて行こうとする若い人たちが、医学部での不正に声をあげることにどんなに勇気がいるかも、想像できます。
 それでも声をあげたい。そんな若い人たちを弁護士として応援したい。そう思ったのは、私だけではありません。全国から多数の弁護士が集まり、2018年8月21日結成したのが、この医学部入試における女性差別対策弁護団です。
 それぞれの思いや、活動報告をこれからの連載で披露させていただきます!
                                  (打越さく良)

★トークイベント「ひとりひとりの「思い」をどうつなげるか みんなで考える「医学部入試問題」のこれから」
 1月31日(木)19時〜21時、中目黒トライ(153-0051 東京都目黒区上目黒3-6-5 中目ビル5階)で、当弁護団主催のトークイベント「ひとりひとりの「思い」をどうつなげるか みんなで考える「医学部入試問題」のこれから」を開催します!
 小島慶子さん、宋美玄さん、瀨地山角さんをパネリストとしてお迎えしたこのイベントに、是非ご参加下さい。
 入場料1000円、お申し込みフォームはこちらです。
https://peatix.com/event/581773
https://www.facebook.com/events/218794542381089/

★カンパはこちらにお願いいたします。
口座名 :医学部入試における女性差別対策弁護団
口座番号:ゆうちょ銀行  記号10310 番号89651341

 *他銀行からの振込みの受け取り口座
   店名 〇三八
   店番 038
   預金種目 普通預金
   口座番号 8965134

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