医学部入試における女性差別対策弁護団のリレーエッセイ、今回は弁護団の横山佳枝が担当させていただきます。
●東京医大訴訟第一回期日
2019年6月7日午前10時、東京医科大学を被告とする損害賠償請求訴訟の第一回口頭弁論期日が東京地方裁判所で開催されました。ほぼ満席となった傍聴席を見て、本件訴訟に対する社会的関心の高さを改めて認識しました。
期日の3日前に、被告である東京医科大学の代理人弁護士から、“請求棄却を求める”、“認否反論は追って行う”旨のいわゆる三行答弁書が提出され、東京医科大学は原告の請求を争う姿勢を示しました(被告代理人弁護士は第一回口頭弁論期日には出席しませんでした)。
第一回口頭弁論期日では、原告代理人の角田由紀子弁護士と原告1名(20代女性)がそれぞれ意見陳述をしました。角田弁護士は、「多くの若い女性たちの人生の大切な時間を奪いさり、その努力を踏みにじり、あるいはその自尊感情を傷つけ、彼女たちに苦悩を強いた」、「人の命を救うことを使命とする医師が、人権感覚の乏しい人々によって養成されるとは、大いなる矛盾」であると述べました。続いて、医師を目指して受験勉強を続ける原告の20代女性も陳述に立ちました。彼女は、込み上げる思いに声を詰まらせながら、医学部受験に向けてどれほどの時間、労力を注いでいたのか、入学試験は成績で公正に評価されるという信頼が裏切られたことを知った時の彼女の思いを述べ、「黙ってしまったら忘れられ、女子が不利なままになってしまうと思い、訴訟に参加した。日本から差別をなくすための一歩にしてほしい。」と訴えました。現在も医師を目指して受験勉強を続けている彼女が勇気を奮って意見を陳述した姿、その生の声は、大変感動的であり、裁判官、傍聴の方々の心にも響いたことでしょう。
次回期日は、2019年7月26日午前10時(東京地方裁判所610号法廷)です。次回期日までに、東京医科大学から訴状に対する具体的な反論書面が提出される予定です。
●順天堂大学に対する提訴
2019年6月20日、弁護団は、順天堂大学に対し損害賠償請求訴訟を提起しました。原告は、10~20代の女性13名であり、そのうち11名は、東京医科大学に対する訴訟の原告でもあります。
順天堂大学に対する法律構成は、東京医科大学に対する訴訟と同様に、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求です。損害の項目も同様であり、各受験生が負担した実費(交通費・宿泊費、大学に支払った入学検定料)のほか、不公平な試験を受けさせられ、精神的苦痛を被ったことを理由とする慰謝料です(請求額合計約4270万円)。
東京医科大学と異なる点は、女性及び浪人生を不利に扱う得点操作の基準が極めて詳細に定められていることです。長年にわたり練り上げられてきた不正の技巧には驚かざるを得ません。不正な得点操作が発覚した際、同大の医学部長は、“女子の方がコミュニケーション能力が高いから、男女間の差を補正した”などと説明しましたが、あまりの言い訳に耳を疑った人も多いでしょう。この説明について、第三者委員会が「合理性がない」と指摘しましたが、正当化される余地はないことは明らかです。順天堂大学が発表した2019年度の入試結果によると、女子の合格率が男子の合格率を上回る結果となったとのことであり、これまでいかに女性受験者が不利に扱われてきたのかがうかがわれます。
順天堂大学に対する訴訟の第一回期日はまだ指定されていませんが、決まりましたらご報告します。
●医学部入試差別問題についてのシンポジウム
当弁護団は、2019年6月22日午後2時から午後4時にかけて、東京ウィメンズプラザにて、「ジェンダー平等こそ私たちの未来~医学部入試差別から考える~」を開催しました。あいにくの雨にもかかわらず、約80名に参加いただけました。
冒頭に、当弁護団事務局長の山崎新弁護士が、医学部入試差別問題の概要とこれまでの弁護団活動・訴訟の進捗について述べ、続いて、和田美香弁護士が、総額740万円が寄付されたクラウドファンディング支援のお礼と支援者からの「応援コメント」を紹介しました。
その後、吉野一枝氏(産婦人科医、臨床心理士)、山口一男氏(シカゴ大学ラルフ・ルイス記念特別社会学教授、シカゴ大学グラハムスクール理事)、辻村みよ子氏(明治大学専門職大学院法務研究科(法科大学院)教授)により、医学部入試差別問題に関し、それぞれの専門分野に即した分析及びご意見をいただきました。参加者に配布した質問票には、取り上げきれないほどの多くの質問が寄せられ、パネルディスカッションも盛り上がりました。
東京医科大学に対する訴訟に続き、順天堂大学に対する訴訟も始まりました。今後も進捗を随時ご報告いたしますので、ご支援どうぞよろしくお願いいたします。
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