法律
相談58:私の父は地方では有名な画家でした。
2018.09.03 Mon
私の父は地方では有名な画家でした。私が小学6年生の時に同じ画家仲間の愛人と海外逃避しそれ以降家に戻って来る事はありませんでした。父が出て行く時の捨て台詞「お前が俺の歳になったらわかる!」と、顔は40年以上経った今でも鮮明に覚えています。女性遍歴が激しく異常な状態の中、母は耐えていましたが、私が中学2年生の時に離婚しました。争いの絶えない緊張の毎日から解放され、母の働いた収入で貧しいけれど母と二人落ち着いた生活になりました。父親の愛情を受けた記憶が殆どありませんでしたので、むしろ父が出て行って良かったと思ったぐらいです。それ以来、父とは断絶状態。時々テレビや新聞等で父の活躍を知り得てはいました。やがて私は結婚し、一人息子も独立した去年、突然新聞紙上で父の死を知りました。80歳でした。父の再婚相手からは何の連絡もなかったのです。今までの私達母子の苦労と無念さが沸々とわき起こり、なにがしかの恩恵を受けても良いのではと言う考えに至り、知人の弁護士さんに相談して調べていただいた所、多額の借金がある事がわかり財産放棄を勧められ、すぐに手続きをしました。その当時は、借金を背負うのが嫌で決断しましたが、一年経って次第に果たしてこれで良かったのか、死後何十年か経ち作品の価値が世間的に認められた場合、一度財産放棄をしたので再度財産分与は認められないのでしょうか?教えて下さい。ちなみに父の実子は私一人です。
「北海道54歳主婦」
回答
回答58:櫻井みぎわ(弁護士)
ご苦労なさったんですね。争いの絶えない家で幼少期を過ごされたのはどれほど苦痛だったかと思います。当時の記憶に蓋をして、長年生きて来られたのではないでしょうか。
お父様の死後、多額の借金があることがわかり、すぐに「財産放棄」の手続きをした、とありますが、「相続放棄」の手続きをしたということなのでしょう。
「相続放棄」の手続きをすると、相続開始(被相続人が亡くなったとき)のときに遡って、初めから相続人でなかったことになります。なので、死後何十年か経ち、作品の価値が世間的に認められた場合に、再度財産分与するのはかなり難しいです。
弁護士に相談して調べてもらって、多額の借金があることがわかって「財産放棄」を勧められたそうですし、相談者さんも、「死後何十年か経ち作品の価値が世間で認められた場合」とおっしゃっているので、現段階では、お父様の作品の価値は、さほど大きくなく、借金の額を大幅に下回るということなのでしょうね。そうであれば、「相続放棄」の判断もやむをえなかったかと思います。
もしお父様の作品が評価される時代が来たときに、「相続放棄」の「錯誤」による「無効」の主張が認められるかは一応問題となります。判例には、被相続人には多額の借金があり、株券については権利行使が難しいという説明を受けて、相続を放棄したというケースで、それが全くの誤解であった場合に相続放棄の錯誤無効の主張が認められたという事例があります。しかし、ご相談者さんの場合は、事情も異なりますし、難しいのではないかと思います。事後的に作品が評価されるようになったことをもって「錯誤」といえるかも大いに問題ですし、また、何十年も経ってからのこのような主張は、権利関係を混乱させ、法的安定性を害することになるからです。
でも、この激動の時代。もしかすると、何十年も経ったら、いまの社会のしくみや法律の解釈も変化しているかもしれません。もし、何十年か後に、お父様の作品が評価される時代が来たら、もう一度相談してみてください。どうぞお幸せになってくださいね。
回答者プロフィール
櫻井 みぎわ
フェミニズムに大きな影響を受けました。
「個人的なことは政治的なことである」という言葉に深く共感。
このメッセージを相談者の方とも共有できればと思います。
離婚、相続、DV、虐待、成年後見、少年事件などを多く担当してきました。
タグ:DV・性暴力・ハラスメント / 非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 女性政策 / DV
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
フェミニストカウンセリング
弁護士
女性センター
セレクトニュース
マスコミが騒がないニュース
女の本屋
ブックトーク
シネマラウンジ
ミニコミ図書館
エッセイ
WAN基金
お助け情報
WANマーケット
女と政治をつなぐ
Worldwide WAN
わいわいWAN
女性学講座
上野研究室
原発ゼロの道
動画












