法律
相談 2: 離婚に伴う財産分与でマンションを譲渡してもらう予定でしたが
2011.08.19 Fri
夫名義のマンションについて、現在店子がおり、店子が退去したのち、残りのローンの支払いを私が引き継いで、離婚に伴う財産分与として譲渡してもらう予定でした。
ところが夫から、「東日本大震災のような地震災害に見舞われ、ローンを抱えてマンションが倒壊する可能性があるから、マンションを売却したい」という提案を受けました。マンションを売却するつもりはありませんが、売却に応じなかった場合、売却に応じなかった私が、地震で倒壊したマンションのローンの支払い(全額)の責任を問われることになるのでしょうか?
回答
相談 2 :回答 小島妙子さん(弁護士)
地震でマンションが損壊して価値がなくなっても、ローン(債務)は全額残ります。いわゆる「二重ローン」問題として被災者の生活再建の足かせになっている問題です。「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」では、債務の支払い・減免について、金融機関と借主が協議する仕組みを整えましたが、被災者の救済には程遠い現状にあります。夫が震災被害に恐れをなして、売却しておきたいというのも無理からぬところです。
なぜなら、ローンの支払に関する法的責任は、債務者(借主)が負い、あなたが連帯債務者ないし連帯保証人になっていなければ、法的責任を負うことはありません。ただし、夫との間で、ローンの支払いに関する内部分担に関する取り決めがあれば、夫が払ったローンについて求償されることになるでしょう。あなたがローンを引き継ぐという約束があれば、全額求償される可能性があります。地震保険等に加入してリスクを減らす必要があるでしょう。
夫名義のローンを引き継いで支払い、マンションの譲渡を受けるというのは、現に住居として使用している場合には引越をしなくて済むというメリットがありますが、資産としての取得を考えるなら、権利義務関係が複雑になるだけで、あまり良い解決とは言えません。思い切って、マンションを売却してローンを返済し、残金を取得するという方法を考えてみてもよいのではないでしょうか。
回答者プロフィール
小島妙子
ジェンダー法学に詳しく著作も多いすぐれた理論家であると同時に、セクハラ・DV、不当解雇、離婚、財産分与等々、幅広く訴訟を扱う頼りになる実務家。事務所にはほか2名の女性弁護士がおり、女性からの相談の受付体制は万全です。