シネマラウンジ

映画と女性と社会をつなぎます。フェミニズム、ジェンダーを視野に入れつつ、映画をとおして世界の女性の多様な生の現実にふれ、ともに語りあえるような交流の場をめざしています。新作映画評、エッセイ、対談・座談会、女性監督の言葉など、映画とさまざまに関わる女性たちの〈声〉をお届けします。

映画を語る

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『彼が愛したケーキ職人』  見えない愛の、甘く、豊かな味わい  中村奈津子

2018.11.11 Sun

ドイツ・ベルリンで小さな店を開く、ケーキ職人のトーマス(ティム・カルクオフ)。ドイツとイスラエルの合弁会社で働くオーレン(ロイ・ミラー)は、その店のなじみ客だった。ふたりは出会ってしばらくののち、恋仲になる。だが、オーレンは結婚しており、エルサレムには妻と息子がひとりいた。それは、もとより承知の上での関係だった。あるとき「1か月後に戻る」

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 映画を語る

シニア女性映画祭 2018年  誇り高くー

2018.10.19 Fri

シニア女性映画祭 2018 高齢女性は人生の喜び、悲しみ、苦難の歳月を経たからこそ、魅力的で個性にあふれています。 いまなお、社会から退くことなく自分自身の人生を生きています。 シニア女性映画祭は、映画を通して、高齢女性の豊かさと多様さを示し、それによってシニア女性文化の創造の力になりたいと思っています。 上映作品を決定するためには、

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『ラブレス』  わたしたちのすぐ足元にある、愛のない世界  中村奈津子

2018.10.18 Thu

モスクワの静かな緑にかこまれた、高級マンションに住むボリス(アレクセイ・ロズィン)とジェーニャ(マルヤーナ・スピヴァク)。夫婦関係は破たんしていて、それぞれにはすでに恋人がいる。どちらも、いまの恋人と再婚するつもりで離婚の協議もすすんでいた。そんなふたりにとって頭の痛い問題は、12歳の息子アレクセイ(マトヴェイ・ノヴィコフ)だった。ボリス

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カテゴリー:DVD紹介

『こほろぎ嬢』 3つの、ちょっと風変わりな<片恋>の物語  中村奈津子

2018.10.04 Thu

この映画は、小説家・尾崎翠が30代後半に書きつづった3つの小説『歩行』『地下室アントンの一夜』『こほろぎ嬢』(いずれも1932年/昭和7年の作品)を原作として描いた、ユーモアとペーソスただよう、3つのちょっと風変わりな<片恋>(片思い)の物語である。尾崎翠の人生と小説世界とを交差させて描いた『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』(1998年)の

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カテゴリー:DVD紹介

『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』  尾崎翠のおもかげに捧ぐ 中村奈津子

2018.09.17 Mon

かつて「幻の」と言われた作家・尾崎翠(1896-1971)の文章には、独特の世界観がある。彼女は、日本の自然主義文学を痛烈に批判し、感覚やイメージ、感情や心持ち(彼女の言葉を借りていえば、「頭で濾過した心臓」)がつかむ世界を大切にした。それらを平易な言葉に乗せて表現し、独自の感性とユーモア感覚あふれる、ファンタジックな作品をいくつも世に送

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カテゴリー:DVD紹介