WANフェミニズム入門塾の第8回目講座が9月17日(水)に開催されました。
今回のテーマは、「ジェンダーと教育」でした。

2名の参加者が講義や議論を通じて考えたことや感じたことをレポートにまとめました。
実感のこもったレポートです。

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①第8回目のテーマは「ジェンダーと教育」 ◆S.K

「男性性:男の子らしさ」「女性性:女の子らしさ」といった「ジェンダー差」についていかに「教育」の中で作り上げられているのかという点において学び、ディスカッションを行った。「ジェンダー性差」とは、本質的なものではなく、教育や社会的に構築されたものが日々この社会では再生産されているものであり、これは教科を学ぶといった「教育」だけの影響ではなく「隠れたカリキュラム」による影響も大きい。「学校」という小さな社会の中で大きな社会の構造をクラブ活動や教師の言動から学び、「女の子らしさ」「男の子らしさ」が作られていく。この再生産の構造が抱える問題点、どのように「変革」していくのかについて学ぶことができた。その中で感じたこと、考えたことを以下の3点にまとめた。

1. 「男の子だから国語できないんですよ・・・」

実際に、身を持ってこの社会構造を実感する出来事はたくさんある。その中の一つが、保護者面談の際の「男の子だから国語できないんですよ・・・」という一言だ。数年前まで私は文系科目の塾講師として働いており、その中でたくさんの保護者の方と話す機会があった。その中で多かった相談が「男の子なので本が読めない」「男の子なので国語ができない」という内容である。
 
本を読むのに「男」も「女」も関係ないはずが、ある教育の得意不得意を語るだけでも「男」「女」が付き纏う。個人としての能力を見るのではなく、集団として分類をし、ラベルを貼る。その中で、その集団としての特性が構築されていく。大袈裟なように聞こえるかもしれないが、このような構造が何重にも存在していることを改めて今回の講座を通して考えることができた。この構造からいかに脱構築していくのか、考え行動していきたい。

2.『俺は「差別」はしないけど「区別」はする』

この驚きの発言も塾講師として働いている際に、そのときの直属の上司から言われたことだ。

連休前で留守電の設定をしなければいけなかった時に「留守電の声は女性の声がいいと思うねんなぁ」と言われた。大学生の時にジェンダーを学んでいたこと、「女性の声」がいいと言われたことに対して納得が全くいっていないかったこと、そして何より上司の手は空いているのに、私は抱えてた仕事に忙殺されていたこともあり、その仕事を長く勤めているアルバイトの男の子に託した。それが気に食わなかったのか、その後不機嫌になり、言われた言葉が「あなたが大学でどんなことを学んできたかは知らんけど、俺は差別はしやんけど区別はするし、その上で女性の声がいいって言ってるねんけど」という支離滅裂な言葉だった。このような発言が容易に言えてしまう人間がある教育現場において権力を持ち、子供たちと接していると考えただけで今思うと恐ろしい気持ちでいっぱいである。また、区別か差別かを決めるのは「する」側ではなく「される」側だし、なぜ女性の声がいいのかという点においても全く回答はできていなかった。この経験から、この世の男性が何かの物事において「女性がいい」ということのほとんどに意味はないのだろうと思ったし、その意味のないことが「女の子らしさ」を形成する大きな要因になっていると思うと、小さな抵抗をしっかりしていきたいと改めて思った。(ちなみに、留守電の音声入力はその上司の元では一回もしなかった)

3.性教育の重要性

これはブレイクアウトルームの中でも、全体のディスカッションの中でも出てきた話題である。私個人的な考えにはなるが、この世の性犯罪や男尊女卑のこの社会は性教育の敗北が大きな理由の一つであると考えている。それほどまでに性教育は大事だ。今の日本では、性教育は男女別に行われたり、歯止め規定などから説明できる範囲も狭くなってしまっている。また、性に関する会話をすることはタブー視され、男女がお互いの身体のことをよく知らないまま大人になってしまう。なのに、規制するべきはずのアダルトビデオや成人向け漫画などに誰でもアクセスできる環境が整ってしまっており、その結果フィクションの行為を現実の関係性に持ち込み、性犯罪だとされるべき行為でさえ、加害者の圧力と被害者の沈黙によって容認されていく社会が出来上がってしまっている。この社会を脱構築し、今を生きる子供たち、未来の子供たちの安全を担保するためにも性教育の改善は必須事項である。お互いの身体のことをきちんと知り、いやらしいもので終わらせるのではなく、性行為のもつリスク、妊娠出産の際にはどのような身体精神の変化があるのか、そもそもsexとしての性差は何なのか、genderとしての性差はなんなのか、なぜ学ぶ必要があるのかなどをきちんと学ぶ環境を整えることが大事である。性教育とは、自分の身体の変化を学ぶためだけのものではなく、この社会を生きる人の身体の構造や変化を知り、他人を思いやるためのものであると、私は考えている。

私がこの社会のためにできることなんて、とても小さく力がないことかもしれない。でも、自分の過去を未来の自分が振り返った時に「あの時の自分は正しいことをした」と誇れるような自分でいたい。そのためにも、「一人一殺」、「女性だから」と理不尽に感じることがあった際には小さくても抵抗をしっかりし、フェミニストの1人として、学ぶこと実践することを諦めず続けていきたいと強く思う。

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②ジェンダーと教育:育成環境が生む価値観の再生産  ◆彩華

9月17日のWANフェミニズム入門塾では、「ジェンダーと教育」をテーマに、性教育、共学と別学の違い、地域における人権教育、家庭教育の役割など、多角的な視点から議論が交わされた。教育という営みが、単なる知識の伝達にとどまらず、ジェンダー意識の形成に深く関与していることを改めて実感する機会となった。

性教育や家庭教育の話題に触れながら、自身の子育てを振り返ると、耳の痛い思いをする場面が多々あった。もっと早くこうした学びに出会っていれば、二人の息子により良い教育環境を提供できたのではないかという悔いが残る。教育は、子どもにとって世界の見え方を形づくる重要な要素であり、親としての責任の重さを痛感する。

「ジェンダーは教育によって作られる」という言葉は、私自身の育った環境や子育ての経験からも肌で感じてきたことだ。たとえば「男の子は青、女の子はピンク」といった固定観念に違和感を覚え、色白だった長男にはサーモンピンクのTシャツをよく着せた。赤や黒、ペパーミントグリーンなど、性別に縛られない色選びを意識していたつもりだったが、それでも無意識のうちに社会的規範に影響されていた部分は否定できない。

私は家庭の経済的事情から大学卒業まで地方の公立学校(共学)で育ち、女子大という選択肢は考えたこともなかった。共学が当たり前だった私にとって、別学が女子にとって望ましい教育環境である可能性に気づいたのは、今回の文献と皆さんの話を通じて初めてのことだった。教育環境の違いが、ジェンダー意識の形成に与える影響は大きく、共学・別学の選択が単なる進学先の問題ではないことを認識した。

学校におけるジェンダーの再生産は、教員だけでなく保護者の言動によっても強化される。教員がジェンダーバイアスを排除しようと努力しても、家庭での価値観がそれを打ち消すこともある。逆に、家庭で対等な関係性を築いていても、学校や他の保護者の言動によって子どもが傷つくこともある。教育は単独の場ではなく、社会全体の価値観が交錯する場であることを忘れてはならない。

私の友人は、近くに頼れる実家もなく、ファミリーサポートのボランティアの力を借りて娘さんを育てた。娘さんは、年老いた一人暮らしの女性、三人兄弟のいる家庭、専業主婦の母親がいる家庭など、さまざまな家庭環境を経験しながら成長した。友人は「私ひとりで育てていたら、こんなしっかりした子には育たなかった。多様な家庭を見て育ったことが娘の財産」と語る。教育とは、学校や家庭だけでなく、子どもが接するすべての環境から影響を受けるものであり、その多様性が子どもの価値観を豊かにする。

今回の文献にあった「もしフェミニズムと出会わなければ、私は『名誉男性』となるか、良妻賢母になるか、いずれにせよ片目をつぶったままの人生を歩んだでしょう。「知る」ことはいつでも力です。そしてフェミニストを名乗る、名乗らないにかかわらず、持ってしまったものはもう、引き返すことはできないのです。」という一節に、私は深く共感し、涙がこぼれた。「知る」ことは力であり、学びは人生を変える。人生の折り返しを過ぎた今、勇気を出して入門塾の扉をたたいたことは、私にとって大きな転機だった。もう引き返したくない。もっと学びたい。もっと知りたい。ジェンダーについての問いを重ねながら、自分自身の価値観も更新していきたい。

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