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自分のなかの“揺らぎ”をみつめる 鈴木彩加
2013.04.05 Fri
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東日本大震災の被災地域によりそい、迷い立ち止まりながら考えることへの共感をつづった、田丸さんのエッセイ。私もまた、2年前の3月、さまざまな矛盾に悩んでいたことを思い出した。
2011年3月11日以降、私は地元・静岡のことをよく考えるようになった。3月15日の夜、静岡県東部でも震度6という地震があった。当時は、物心ついたころにはすでに来るくるといわれていた、東海大地震の予兆なのでは、富士山も噴火するかも、と思った。なにが起きてもおかしくない、そう思える状況だった。もちろん、いまだってその危険性があることは忘れてはならない。
当時、私が悩んでいたこと。ひとつは、原発の運転停止をもとめる声についてだ。静岡は富士川をさかいに、西は中部電力、東は東京電力の管轄だ。東京電力管内の私も地元は、計画停電でしばらく不安定な生活を送っていた。
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静岡県の西部、御前崎には、鎌田慧『原発列島を行く』でも取りあげられている、中部電力の浜岡原発がある。震災直後、この浜岡原発の停止をもとめる声が強くなった。
大地震がくるとわかっている地域に、原発を設置したことは間違いだし、廃炉にしてほしいと思い続けてきた。ところが、当時の私は、「むしろこんなときだからこそ、稼働していてほしい」と思ってしまった。
信号機もつかず夜は真っ暗だったという話を聞くなかで、たとえ川をはさんで向こう側であっても、電気がついていることはどんなに安心することだろう、という理由からだった。
このことが論理的にいろいろと破綻していることは明らかだ。実際に稼働停止している今でも、電力供給に問題はない。しかも、地元の静岡県東部はそもそも管内ですらなく、浜岡原発が稼働していても、その電力が家族や親戚・友人たちの暮らしに届くわけではない。
浜岡原発の運転停止をもとめる声は、だれが・どこから発しているのだろうか、静岡の状況を知ったうえでいっているのだろうかと思った。もちろん、そもそも原発がなければ、こんなにもやもやする必要すらなかったことは、いうまでもない。
ふたつめは、全国放送のニュースをみたとき。富士山が噴火したら、火山灰は東京にどのくらい積もるのか、報道されていた。確かに、東京は政治・行政・経済の中心地で、もしそのような事態になったら多くの人に影響を与えるだろう。
しかし、なぜそれ以上に、暮らしに直接影響を受けるであろう静岡(あるいは山梨)のことが報道されないのか、「全国」とは東京のことなのか、そもそも、そういった大都市中心の視線が、財政基盤の乏しい地方に原発をつくってきたのではないだろうか。
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小長谷澄子『静岡の遊郭 二丁町』は、そんなことを考えていたときに出会った本。二丁町とよばれた遊郭が形成された歴史、そこに住んでいた人びとの暮らしぶりや町の文化を掘りおこすだけでなく、二丁町を知る人びとへの聞き取りをとおして、著者自身の二丁町にたいするまなざしが変化していくさまが丁寧に描かれている。地方をみること・地方からみることに意識的になったからこそ、出会えた本だと思う。
地方にはその地方の特色や利害・そして歴史があり、それは必ずしも東京に代表される「日本」と一致するものではない。藤田豊『忘れられた地域史を歩く--近現代日本における差別の諸相』は、地域史をみることで、現代につながる差別の構造を明らかにしている。自分に縁のある地域の歴史を知ることは、「日本」を相対化して考えることへとつながっていくはず。
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