エッセイ

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『パンパンとは誰なのか―キャッチという占領期の性暴力とGIとの親密性』 茶園敏美

2014.10.15 Wed

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.本書は2014年度竹村和子フェミニズム基金の支援を受けて、出版することが叶いました。支援をしてくださった竹村基金のみなさまに、まずお礼申し上げます。ほんとうにありがとうございます。

竹村基金のことを知ったのは、2013年の募集が終わった直後でした。竹村基金は、「助成金にアクセス不能(または困難)」な申請者に重点がおかれた基金であるということ、そしてそれは竹村和子先生の生前の強いご希望であったことや、審査委員のかたがたのご希望でもあるということを知りました。諸事情でしばらくの間、研究に専念できなかったわたしにとって、竹村基金の主旨はとてもありがたく温かな気持ちになりました。

ここで、本書の構成と概要を簡単にご紹介させてください。

はじめに/第1章/Ⅰ部 パンパンをめぐって(第2章、第3章)/Ⅱ部 GIをめぐって(第4章~第6章)/Ⅲ部 性暴力としてのキャッチ(第7章、第8章)/Ⅳ部 合法的な性暴力―おんなたちの身体を管理する法(第9章~第11章)/おしまいに

「はじめに」は、パンパン(GI相手の売春婦)に注目することになったいきさつを、わたしがかかえていたトラウマから話をはじめています。

第1章は、謎めいて魅力的なパンパンが、どのようにして世間の注目のまとになったかを知る手がかりが、ちりばめられています。

第2章以降は、Ⅰ部からⅣ部の4つのパートで構成しています。

Ⅰ部とⅡ部は、彼女たちを見る視線(Ⅰ部)と、彼女たちから見た視線(Ⅱ部)に注目しています。とくにⅡ部は、彼女たちがどのようにGIと知り合って親密な関係となったのかを、彼女たちが歩んできたライフストーリーの記録からアプローチしています。

Ⅲ部とⅣ部は、おんなたちの尊厳を奪うキャッチ(検挙)および強制的な性病検診を性暴力として位置づけ、白昼堂々と衆人環視のもと行なわれたキャッチが今もなお、世間で性暴力と認識されにくいのはなぜか、ということをとりあげています。

Ⅰ部~Ⅲ部の各章(第2章~第8章)は、短編ものがたりを読む感覚で、どの章からでもご自由にお読みください。

Ⅳ部の第9章~第11章だけは、連続ものがたりを読むような感覚で、第9章から順番通り読んでいただくと、興味深く読めるかとおもいます。というのもⅣ部では、どのようにしておんなたちの身体が合法的に管理/処罰の対象にされてしまうのか、法制度の成立過程に注目しているからです。

「おしまいに」は本書のまとめとして、パンパンに関してこれまでなにが不問にされてきたのか、さらに不問にされたまま現在のわたしたちへ引き継がれていることはなにか、をとりあげています。

来年は戦後70年にあたります。本書は占領期の話ですが、占領期という特殊な時期の特殊な話ではありません。キャッチという性暴力を被ったことを、いまだに公に言えない状況が存在することこそ、おんなたちに振るわれた暴力は、今なお継続中といえましょう。

キャッチ被害にあわれたかたがたの年齢を考えると、尊厳を回復するのに、あまり時間が残されていません。

風化されようとしているキャッチという性暴力の事実を、本書をとおして一刻も早く広くみなさまにお伝えすることが、現在も沈黙しているお姉さまがたの尊厳を取り戻すための支援に繋がると同時に、竹村基金が目指すジェンダー正義やジェンダー平等の達成、そしておんなたちのエンパワメントに資すると信じています。

パンパンとは誰なのか。

すべての姉妹兄弟に、本書の声が届きますように! (著者 茶園敏美)








カテゴリー:竹村和子さんへの想い

タグ: / 売春 / 米軍基地 / 戦時性暴力 / セクシュアリティ研究

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