エッセイ

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学校なんていらない? 秋月ななみ

2014.12.17 Wed

                      発達障害かもしれない子どもと育つということ。25

 

中学なんていらない。 不登校の娘が高校に合格するまで (メディアファクトリーのコミックエッセイ)

著者/訳者:青木 光恵

出版社:KADOKAWA/メディアファクトリー( 2014-11-21 )

定価:¥ 1,080

Amazon価格:¥ 1,080

単行本 ( ページ )

ISBN-10 : 4040671538

ISBN-13 : 9784040671536

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子どもが小学校にあがってから、日本における公立の学校の義務教育について、考えさせられることが多くなった。そんななかで出会った不登校についてのエッセイマンガについて、今日は紹介したい。青木光恵による『中学なんていらない-不登校の娘が高校に合格するまで』である。

 

うちの娘は別に不登校ではない(エッセイにでてくる娘のちゅんこさんは、親御さんが小学校のときに発達障害を疑ったことはあったが、結果としては発達障害ではない)。それでも、私は親御さんの(青木光恵さんの)気持ちが、手に取るように分かる。

 

断っておくが、おそらく娘の担任の先生は、できる限りのことをやってくれているのだろうと思う。感謝している。さまざまな約束はいつまでたっても果たされないものの、それはもう、なんというか、諦めた。はっきり言ってしまえば、トラブルが表立って起きなければそれでいい。目標をそこに定めて、「やりすごす」ことにした。

 

そして勉強も、学校に期待するのはやめることにした。「障害枠で就労して、社内の手紙の仕分けをしたりするのには、記号さえ分かればいい。九九も読み書きもいらない」と思われているところに、何を言っても無駄な気がする。幸いにして娘はちょっとした手助けがありさえすれば、自習は得意である。学年以上の漢字を読みこなしてもいる。学校の「授業」についていけなくても、今のところ、「勉強」にはついていけているのだから、それでよいと思うことにした。そのかわり、勉強をみるために、私の時間をやりくりしなければならないけれども。かなりの時間を療育に使っているうえに勉強となると、こちらのほうもへとへとである(にもかかわらず、学校側には「家では勉強をさせないで、親子の絆を深めてください」とか言われるわけである。私だって、させたいわけでは全然ない…)。

 

さて。光恵さんの娘さんは、同級生の男の子による「いじめ」がきっかけで、おもわしくなかった体調がみるみる悪化する。結果として学校に通えなくなるのだが、行く先々の病医で、親が責められる。

 

まず、最初に連れていった内科では、お医者さんが、「うーん…。これといって悪いところはない感じだけど。頭が痛い子は怒っている子、お腹が痛い子は寂しい子、とかいうけどね~」(以下句読点など適宜補足)という調子。青木さんは思うのである。「それはー…。お母さんが娘さんに寂しい思いをさせているのでは…?――と遠回しに言ってます…?」。

 

次の小児科では、「うーん…。これといって悪そうなところはないですが……。ちゃんと娘さんをかまってあげてますか? 愛情不足じゃありません?」。さらにまた漢方の病院で、「学校にも行ってません」と告げると、「行ってない? なんで!? そんなことじゃダメだ! いやなことから逃げてるだけだろ! お母さんあんたが甘やかしすぎだろ!」と怒鳴られる。

 

以下、青木さんの怒り。

 

なんだ、なんだ、なんなんだ!? みんなそんなカンタンにそういうこと言う?
娘が小さい頃から「甘やかしすぎてません?」もしくは「厳しすぎてません?」。
このどちらかを言われ続けてきてて「もう飽きた!」
別に甘やかしてませんし、私は私なりに、愛情をもってやってます! つか!! 子供に何かあったらつねにその二択かよ!!
①あまやかしすぎ
②愛情不足
プロならもっとひねれや!!

 

本当にその通りである。もう一度繰り返すと、本当に本当にその通りである! いつもいつも、「愛情不足」か「甘やかしている」。どちらかで責められるのにも、私ももう本当に飽き飽きしている。うちの場合は、「生まれもっての子どもの特性だから」と思うことも可能だが、全面的に自分の子育てを否定されるのは、本当に辛いだろう。そもそもこういう発言をする人が、子どもの立場に立って考えてくれているとは思えない。なぜなら子どもが快適に過ごすためには、まずお母さんにも余裕が必要だからだ。本当に親が「ダメ」だとしたら、そんな「ダメ」な親を追いつめても、なおさら事態は悪化するだけではないか。

 

また子育ては、自分自身の変容を余儀なくされる営みでもある。何度も繰り返される、同じようなモノローグ。

 

「私って凡人!! ただの凡人!!」
「自由が一番って思ってたやん! 学歴とかどうでもいいって思ってたんやん。安定とかおもしろくないって言ってたやん!!」
それなのに!! 娘にはちゃんと学校に行って勉強して
ちゃんと働いてほしいって思ってる。
「つまんない!! つまんない人間だな私は!」

 

 同じである。私も「個性が大事」とか、「その子らしさを大切にすればいいんだ」と子どもを持つまで思っていた。今でも他人の子どもについてなら、心の底からそう思う。でも自分の子どもの「特性」(落ち着きがなくて、状況が読めなくて、集団行動ができない)を、そのまま受け入れることはできない。子どもの存在を行け入れることはできる。でも、その部分はできる範囲でいいから、変わって欲しい。「社会性」を身につけて欲しい。そしてやはりきちんと、経済的にも自立して欲しいと思う。

 

 子育ての過程で、何よりも「公立の義務教育」について、考えさせられるようになった。すべての人間に同じ教育がひらかれているということは、「平等」という視点から見れば、素晴らしいことである。首都圏でゆとり教育からさらに加速した私立受験の動きも、もろ手を挙げて歓迎できることはできない。やはり格差の拡大を加速させるからである。地域の学校を中心として、様々な人々が共に支え合い、多様性を学ぶのは意味のあることだとも思っていた。今も思ってはいる。

 

 しかし、自分の子どもを学校に実際に通わせると、義務教育の公立の学校に、いちおうの「平等」はあるかも知れないが、「自由」がないことに、改めて気付かされる。教育のイニシアティヴをとるのはあくまで学校。保護者は、子どもを預けている身でもあるから、対等に話をすることも難しい。こうなってくると、「選択」による「競争」を導入するという学校選択制(ほとんど失敗に終わったが)などで、学校が「開かれた」ことを評価しなくてはいけないのかもしれない、と思わされてしまい、実にほろ苦い気持ちになってくるのである。教育に競争原理を持ち込むのは、基本的には賛成できない、という気持ちも確かにあるからである。

 

 青木さんの本では、いじめっ子と引き離すためのクラス替えはできない、納得がいかないなら、娘さんのほうが保健室登校をしてみたらどうか、などと先生から提案される。何を言っても「できません……。公立校なので…」という返事。

 

 「なんだこの理不尽な現象は!! 公立とは何ですか――!? 平等とはなんだ――!!」

 

子どもを持つ前なら、「オーバーな」と思ったであろうこの青木さんの雄叫び(?)をあげるときの気持ちは本当によくわかる。そして金銭的に切迫している状況で、お金のなさが事態を重苦しくしていく気持ちも、シングルマザーの自分には、本当によくわかる。つねにお金の計算との闘い。お金を掛けて失敗したときの、失望感も半端ない。以下、マンガから。

 

それにしても、こう考えてみると…。タダで義務教育が受けられるって、すごいことやよなあ~!!
学校に行けないと自費で勉強するしかない年で!!
金持ってへんと勉強っできひんわけやん?
実際に私達は今そういう状況に置かれている訳で、ほんっと! お金さえあればもっとおっとりとした私立の中学に転校させることもできるし、極端な話、(『アルプスの少女ハイジ』の)クララみたいに全く外に出ずすべて家庭教師でもいいんやし、引きこもりでも!お金さえあれば!
しかしそんな金…。うちにはない…ッ!!
いじめた側の親がお金出してくれないかな!! 出せばいいのに!!

 

無料で、誰にでも、「平等」に受けられる義務教育。だからこそ、画一的で、選択の「自由」がない。むしろ違いがあっては困る。もしも「自由」を行使したいのだったら、お金が必要であるという。世知辛い。いつもいつも、引き裂かれたような気持ちにさせられる。

 

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シリーズ「発達障害かもしれない子どもと育つということ。」は、毎月15日にアップ予定です。

 

シリーズをまとめて読むには、こちらからどうぞ

 

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カテゴリー:発達障害かも知れない子供と育つということ / 連続エッセイ

タグ:発達障害 / 子育て・教育 / 秋月ななみ / 青木光恵

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