2011.06.29 Wed

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ぼくとリンダと庭の船

訳者など:ユルゲン・バンシェルス ()

出版社:偕成社

 なんとも据わりの悪い邦題ですが、それで手に取るのを止めるとちょっと勿体ない作品です。  ぼくの母親は、包装紙デザイナー。でも父親のDDが木から落ちて亡くなってからは、そのことを受け入れられず、心ここにあらずの状態が続いています。もちろんぼくだって、十分悲しいし寂しいけれど、そうも言っていられない。このままでは生活が成り立たない。だからぼくは母親を慰め励ましデザイン画を書かせ、取引先とは自分が交渉し、家のお金の管理もしています。  かわいそうな子どもではなく、彼にとってはそれが普通の日々であるのが大切。  でも、そんなぼくの学校にリンダが転校してきます。彼女は奔放に見え、クラスでは引かれますが、何故かぼくは好かれ、ぼくも惹かれます。  こうしてぼくの日々に、リンダへの恋心が性欲とともに加わっていくのです。  すかっとする展開はなし。でも、ちゃんと立って、誇りを持って生きていこうとする子ども、でも、うろたえもする子どもが、リアルに描かれていて、これは本当に小説でしかできないことです。  読んで欲しいなあ。  邦題の据わりの悪さも、格好良く決められない日々を描いていることを反映しているわけですから。

カテゴリー:家族 / ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

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