家族 ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

わたしは、わたし (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

2011.07.12 Tue

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わたしは、わたし (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

訳者など:ジャクリーン ウッドソン ()

出版社:鈴木出版

 「わたし」の名前はトスウィア。「わたし」の名前はイーヴィー。一つ目は親がつけた名前で、二つ目は「わたし」がつけた。  遊びじゃない。今、「わたし」のIDはイーヴィー。トスウィアはもういない。「わたし」はイーヴィーを生きるしかない。  この物語の設定はとても重いものです。イーヴィー(トスウィア)の父は警官。ある日同僚二人が、両手を挙げている黒人少年を射殺するのを見ます。これを見逃していいはずはない。が、彼も黒人でした。ことは人種問題のように見なされ、父はもし裁判で証言すれば命に危険が及ぶようになります。これまで親しい仲間だったはずの白人警官たちは態度を変え、彼を脅します。トスウィアにとって、小さな頃から可愛がってくれたはずの父の同僚たちが牙をむき凶器となります。  それでも父は娘たちのためにも(だって、その少年は彼の娘だった可能性があるから)証言を決意。が、そんな彼と彼の家族の命を守るためには、彼らのIDを変えてしまうしかありませんでした。  こうして、トスウィアはイーヴィーとなり、見知らぬ街で過去を偽って生きるようになるのです。  ウッドソンですから、そこで描かれているのは偏見と無理解、そしてそれに対峙する寛容や理解、受け入れです。物語はそのように進み、この過酷な事態の中から主人公たちの幸せへの模索がなされています。  と同時に、この設定によってウッドソンは、ID,まさにアイデンティティとは何か?を私たちに考えさせてもくれます。

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