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『ミンナ』 片山かなみ

2013.08.09 Fri

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.破滅的な父親によって日本各地を転々とする姉妹とその母の物語です。

WAN理事長である上野千鶴子様からも「物語を生きのびる手がかりとする少女の姿」に励ましのお言葉を頂いた小説「ミンナ」を、著者 片山かなみより紹介させて頂きます。

物語は14歳の少女夏実の一人称でつづられます。夏実は入院していて、カウンセリングを受けている。
このシチュエーションはどう受け取って頂いても構わないのですが、作者としては、精神神経科での語りとして書き進めました。

私自身、十代の頃、精神神経科に入院したことがあります。
14歳の少女は壊れやすい。あの世とこの世の境目にいるような存在です。そのあやうさを、カウンセリングによって救ってやりたかった。つまり「14歳の私」の救済、という意図からこの小説は芽生えました。

こういう個人的な意図から生まれた小説であっても、結果的に普遍的な作品になったという点で「ミンナ」は成功しました。既にたくさんの賞賛のお便りを頂いています。

「ミンナ」は、夏実の姉である「美名」の愛称です。大好きな姉、自分を守ってくれる美しい姉、それは夏実の全て、つまり「みんな」でした。

ミンナが夏実の服を作ってやったり、勉強を教えてくれたり、という献身的な描写に対する感動のお便りを一番多く頂いていますが、女優の秋吉久美子氏は「美しく残酷な話」と深く読み込んで下さいました。
その通りです(秋吉氏は私がフランスの作家、マルグリット・デュラスの影響を受けていることも指摘して下さいました『隠れデュラス』のつもりだった私ですが…。非常に鋭い方です)。
家族というのは、美しいつながりであると同時に、生命力の拮抗、「切るか切られるか」の残酷な関係性でもあります。誰もがある時期にそれを感じ取って「お互いに生きのびる」道をみつけなければなりません。
「ミンナ」のラストはその方向性に向かっています。

「ナナ」という約百枚の作品も同時収録しました。
これは文藝春秋社の文芸誌「文學界」の第81回新人賞の最終候補に残り、賞を逃した小説です。当時の選考会で賛否両論を頂きました。
今回世に出してやって、すばらしい感想を多く頂いており「出してよかった」と実感しています。

私が「精神的師匠」としている人のひとりに、ハンガリー出身の作家アゴタ・クリストフがいます。1956年のハンガリー動乱の際に乳飲み子を抱いてスイスに亡命、母語を捨てて成人後に習得したフランス語で「悪童日記」(Le Grand Cahier)という名作を書いた女性です。
彼女は「文盲」という自伝的な本(堀茂樹訳 白水社)の中でこう書いています。

人はどのようにして作家になるかという問いに、わたしはこう答える。自分の書いているものへの信念をけっして失うことなく、辛抱強く、執拗に書き続けることによってである、と。

実は私片山かなみは、甲状腺がんと診断された身なのですが、そんなことでくじける程度の執筆への欲求ではありません。
いまも、これからも「辛抱強く、執拗に」書き続けます。

本書はただいま、アマゾンで購入しにくくなっています。本書にご関心のある方は、

pervenche77@yahoo.co.jp

へ、メール・タイトルに「『ミンナ』購入希望」とお書きになり、ご連絡ください。








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