エッセイ

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第1回 女たちの物語―少女マンガの母娘・姉妹―

2012.01.01 Sun

女たちのつながりは、このジェンダー化された世界の中で、なかなか一筋縄ではいかないもの。その中でも特に母と娘、姉と妹の関係は愛おしくもあり、やっかいでもあります。今回はB-WANのイチオシメンバーのhorry、あすか、yukiの三人が秋深まる京都の地で、母と娘、姉と妹が描かれた少女マンガについて語り合いました。その様子を3回に分けてお送りします。

母と娘の複雑な関係

yuki みなさん何人きょうだいですか?私、三人きょうだいの一番上で下に妹と弟がいます。

horry 二人姉妹のおねえちゃん。

あすか 私、三姉妹の一番上。

一同 長女ばっかり!!(笑)

yuki この『海街diary』は密かに長女文学だと思っているんですが、どのお話が一番印象的ですか?

horryいろいろと良いシーンが多くて、姉妹の良いお話もあるんだけど、母と娘ってことなら二巻の「真昼の月」かなぁ。

あすか 私も「真昼の月」。

海街diary(うみまちダイアリー)2 真昼の月(フラワーコミックス)

著者/訳者:吉田 秋生

出版社:小学館( 2008-10-10 )

定価:

Amazon価格:¥ 589

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4091670377

ISBN-13 : 9784091670373

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yuki 海街diaryは、鎌倉に住む三姉妹が、かつて不倫の果てに家を出て行った父親の葬儀で母違いの妹に出会い、一緒に住み始めるのが一巻。実は、三姉妹の母親は父親と離婚した二年後に再婚して家を出て、それ以来三人は母親の実家でおばあちゃんと暮らしていたんですよね。そのおばあちゃんも亡くなって三姉妹だけで暮らしていた。母親が出てくるのが、二巻のおばあちゃんの七回忌。私はこの長女の幸さんの気持ちが痛いほどよく分かります。

horry 分かる分かる。

yuki こっちはお母さんの味方になって、お母さんを守らなきゃって思っていろいろがんばっているのに、お母さんはお母さんで自分の人生を生きてて、別の男性を見つけてさらっと家を出て行ってしまうという。なんなの、この置いてきぼり感は。

horry お母さんと娘の関係の中でも、女対女、一対一の関係になるのは長女って感じがする。「真昼の月」の中で、お母さんが急に家を売るって話を持ちかけるんだけど、そのときにすごく怒ったのはお姉ちゃんなんだよね。ここのお家ではお父さんがいないってこともあって、お姉ちゃんが家長役をやっていて、お母さんが娘みたいになっている。長女とお母さんは一方的な保護される者とする者の関係ではないなーと思う。

カレーのうつす家族の情景

horry お母さん、料理下手ってエピソードがよく出てくるよね。それで、三姉妹が「なぜ我が家はカレーといえばシーフドなんだろう」って話になったとき、長女だけが唯一、カレーだけは上手だったお母さんから作り方を教えてもらっていて、それがシーフードカレーだったんだよね。一番上ってお母さんと「同志」みたいな関係なのかも。家事をお姉ちゃんをすっとばして下の子に頼むことはあんまりないだろうし、そういう責任感とかからも、お姉ちゃんはお母さんを甘える対象としてだけじゃ見れなくなってくる。下の子はお姉ちゃんとお母さんの同志関係からはずれていてさびしいんじゃないかな。もちろんお姉ちゃんはお姉ちゃんで色々しんどいんだけど。

yuki 確かに。この中でも三女の千佳ちゃんは、お父さん、お母さん両方の思い出があまりなくて、カレーといえば上の二人はシーフードなんだけど、千佳ちゃんはおばあちゃんのちくわの入ったカレーなんですよね。

horry 『海街diary』のカレーをめぐるエピソードって、娘と母が一緒にすごした時間と別々に過ごした時間の、両方を描いているんだよね。時が経つことでなんとか折り合いをつけたり、つけられなかったりするような、諦めに似た思いが、「料理」っていう伝達様式に込められているのが面白いなーと思う。

あすか この作品って、家でみんなでご飯を食べるときは月に数回の朝御飯の日だけなんですよね。一緒に住んでいて、家族なのに鍋を囲まない。鍋とかすき焼きって、日本では家族の象徴として扱われているんです。このマンガの中で食事のシーンは結構出てくるけど、家族皆でご飯を食べるシーンが少ない。そんな彼女たちの関係をつなぐのが、「今この場で一体感を感じる鍋」ではなく、「時間をおいて味が染みて絆になるカレー」なのかな、と思いました。








カテゴリー:女同士のつながり / シリーズ

タグ: / 母娘関係 / 漫画 / 姉妹