エッセイ

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第3回 女たちの物語―少女マンガの母娘・姉妹―

2012.01.15 Sun

こわいこわい山岸作品

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yuki
 山岸涼子さんはいろいろな年代の女性を描いているんだけど、やっぱり私は『夜叉御前』が強烈で。本当にこれって怖いですよね。男をはさむ母と娘の女対女の関係がこの短い話に端的に表されていて。未読の方はまず読んでほしい。

あすか 本当に怖い。山岸さんの作品は他に『汐の声』っていう母娘モノもあって、それも怖い。

yuki 『夜叉御前』は、はじめずっと娘のモノローグで話が進行していくんです。引っ越しをしてきた家には恐ろしい鬼がいて、夜、黒いものが娘に覆いかぶさってくる怪奇現象がおこる。実は鬼っていうのは母親で、娘が父親にレイプされている様子をじっと見ている。

horry その「実は」ってところを読者に知らせるのが、終盤の母親が父親を斧で殺す1ページっていうところがすごい。私、はじめて読んだ時ね、これはお母さんが娘を助けようとしてるんだと思った。まず、お父さんの方を殺してるから。

yuki それすごく新しい見方ですね。母親は父親を殺してから娘を殺そうと追いかけてくるから、単に助けようとしたわけではないだろうけど、まず父親を殺してますものね。男を挟んだ女対女の関係だったら、男を殺さずに相手の女の方を殺しますよね。

horry この話は女対女の話に思えるけど、それだけには収まらない母と娘の話かもしれない。

あすか そう考えて読み返すと、お母さんがある意味、守護天使に見えてくるかも。怖いけど。

母が娘に望むこと

あすか 同じ山岸作品の『舞姫―テレプシコーラ』では、お母さんの期待を一身に受けて追い詰められていく千花ちゃんが痛々しくて。お母さんのコンプレックスをいろいろ背負わされて可哀想だった。

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yuki
 コンプレックスの話といえば、『愛すべき娘たち』の最終話の祖母と母の話を読むと母と娘って自分のコンプレックスの問題が大きく影響していているなと思う。おばあちゃんは、女学校の同級生で綺麗なことを鼻にかけて意地悪だった子みたいになってほしくなくて、娘である母の容姿をけなしてきたから、母は美人なのに自分の容姿にコンプレックスを持っている。100%娘のためではなくても、娘をダメにしたくないという気持ちは本当なのに上手くいかない。

horry お母さんがおばあちゃんに対して思っているみたいに、思春期の頃って「あなたのために、お母さん言ってるんだから」っていう母親の言葉を「なんだかんだいって、結局は自分のためでしょ」って思ってたような気がする。

yuki お母さんは、おばあちゃんから「あんたのため」と言われて、いろいろと理不尽なことで叱られてきたから、自分が親になったときは絶対「あんたのため」っていうのは使わないでおこうと決意して、実際に「これは八つ当たりよ」って娘に言いながら怒ってる。

horry お母さんってすごく矛盾してるんだけど、それが「お母さん」だから腹がたつ。あんまり父親には思わないんだけど。「なんでお母さんなのにそんなこと言うの?」って。

yuki 自分がされて嫌だったこと娘にしないでおこう、自分がしたかったことを娘にさせてやろうって。そうすることで自分の人生を、ある意味、供養しているところがあるのかもしれない。

horry 母親って同志であり、こんな女って嫌だなって思う部分もあり。でも今は、やっぱりお母さんはお母さんだなって思う。うちの母は最近、何をどこでしてても生きてくれてたらそれでいいって言うのね。私にはそういうことを心から言える人がいるかって考えると…、うーん…やっぱり、お母さんはお母さんだなって思う。

yuki 私は最近、母親から孤独死の心配をされていて、自分が死んでしまった後の私のことが心配みたいです。

あすか 母が私の結婚のことすごく心配してます。

horry お母さんって娘に多くを望んでいるようでいて、もちろん多くを望んでいるお家もあるんだろうでけど、意外と娘たちが思うほどに望んでいないのかもしれない。

yuki 子供のうちは分からない、大人になってだんだん分かることかもしれませんね。

座談会を終えて

yuki 今日は30年くらい前に出版されたものから最近のものまで、母と娘、姉妹を中心に印象深い作品について語り合いました。座談会を終えてみてどうですか?

horry 母娘モノって母息子と全然、描かれ方が違うって話が出たんだよね。これはなんでなんだろうか、と。父娘モノもまた独特だし。そういう風に考えると、女性の問題、ジェンダーの問題って、マンガの中にしっかりテーマとして根付いているんだなー、なんて思いました。

あすか 今まで、そういった意識を持って読んでいなかった漫画も、改めて「目」を持って読み返すといろんな発見ができました。人と漫画の読み方について語る機会がなかったので、本当に楽しかったです。この座談会の記事をきっかけに、誰かが考えながら読む目線を持ってくれたら、と思います。漫画だって、文学なんだと主張したい!(笑)

yuki 私は特に『イグアナの娘』や『愛すべき娘たち』を読んで、母と娘の和解って娘が母のあり得たかもしれない未来を悼むことから始まるのかもしれないなって思いました。母娘モノが母の人生と娘の人生の複雑な重なりを描くのに比べて、母息子はそれぞれ独立しているかんじで、母息子モノを娘におきかえるとどういった物語になるのか考えてみるのもおもしろいかもしれません。今日はマンガ以外にもそれぞれの家族のお話もたくさん出て、語り合うことの楽しさを味わえた一日でした。

座談会ではとりあげることができませんでしたが、女同士のつながりを描いたマンガはまだまだたくさんあります。

そこで、次回からはオススメブックガイドを掲載します。








カテゴリー:女同士のつながり / シリーズ

タグ: / 母娘関係 / 漫画