2013.05.27 Mon
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絲山秋子の「超然」をテーマとした小説集。「妻の超然」「下戸の超然」「作家の超然」の三作が収められている。
「妻の超然」の主人公は結婚10年目の48歳の主婦。5歳下の夫との仲は冷めきっているが、現在浮気中の夫(単純な彼は、妻に浮気がばれているとはつゆ知らず)と、別れる気はない。
「下戸」と「超然」のコンビネーションは言いえて妙だ。下戸の主人公、広生曰く「酒飲みや嫌煙は思想と結びつくけれど、下戸は思想と全く関係ない。健康の問題でさえない。健康のために酒をやめる人はいるけれど、下戸はそもそもなにもやめていないのだ。部外者と言っていい」。
一人で生きることにさびしさを全く感じないという作家が主人公の「作家の超然」。二度と会うこともない人たちの名前がずらずらと並ぶ、携帯やパソコンのアドレス帳を「死者のリスト」と呼ぶ彼女だが、「だが〈死者のリスト〉からどうしても削除できないのは、本当に死んでしまった人の連絡先」という一節にドキッとする。
どの主人公も、かなりテンション低めである。舞台は小田原、つくば、たぶん高崎あたり。彼ら/彼女らは、その地の出身者ではない。関東には位置するが、東京への通勤圏と言うにはちょっと遠く、つくばは学園都市だし、地方とまでは言い切れない、中途半端な感じ(住民の方ごめんなさい)もこれらの小説のテンションに合っている。まあ、かくいうわたしは、テンションもそこまでは低くなく、「下戸」でもなく、友だちが周りにいないとさびしいしで、超然への道はとおいのだけれど。(lita)
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