エッセイ

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震災ボランティアと女子会  和田直美

2011.06.17 Fri

“女が集まると女子会になり、男が集まると組織になる”。そう感じた出来事があった。

私は、ゴールデンウイークに東日本大震災の震災ボランティアとして、被災地へ向かった。ボランティア団体に所属し、偶然チームとなった6人と一緒に行動。20代~60代の幅広い年齢層の面々。「阪神・淡路大震災ではボランティアできなかったから」「若い頃自衛隊を目指していて、じっとしていられなかった」「大地震が必ず来ると言われた地域で育ったから、他人事ではなかった」「東北出身で地元のために何かしたかった」など、ボランティアの動機は様々。ふつうより少し熱い使命感を持った私たちは、男女関係なく家族のように充実した日々を過ごした。

それは、男女3:3に分かれて寝たテントでおきた。女テントは比較的早い段階で“敬語からタメ語”となり、恋愛や結婚、今の仕事や将来の夢について、寝るまでおしゃべりを続けた。二日目には、流行りのドラマをケータイで見たり、持ってきたコスメや服のお披露目会までした。即席の“女子会”は、大盛りあがりである。

隣の男テントも同じように盛り上がってだろうなと耳をすますと、
60代男「戦後はな、進駐軍のジープをおっかけて“ギブ・ミー・チョコレート”っていってな、兵士にチョコレートねだったんだよ」
30代男「そんなご経験もあって、さすがですね~。なあ、若者」
20代男「はい!」

まさかの“戦後話&敬語”である。その後も“人生とはなぁ”“会社から独立して起業した時はなぁ”“男として家族を守るってぇことはなぁ”などなど、ここはオフィス街のそば屋か?と思わせるような話題の連続。「話す人。同調する人。傾聴する人」の組織的役割分担がキッチリ。“女子会の隣は組織”だったのだ。そして、驚くことに、この組織はずっとこの体制で運営されていた。

そして気がついた。女性は年齢や生活スタイル・仕事のキャリアが違っても、恋バナや健康ネタなど、仕事以外の話ができるから、初対面でもすぐに打ち解け、タメ語となり“女子会ノリ”になることができるのだ。
逆に、男性は年齢と仕事のキャリアで順位をつけた後は、どんなに若者が充実した私生活を送っていようとも自慢できず、長く仕事をしている年長者を崇めなければならないのだ。

しかし、組織的になるから男性が集まっても面白くないとは言えない。実際、男テントからは、終始、笑い声が聞こえてきたし、親子のような絆もうまれたようであった。
そして、女子会ノリにも問題はある。私は年上の女性に対して、敬語とタメ語がごっちゃになった“敬タメ語”を使っていた。これは、私が年長者を敬う組織的役割から完全には離れられず、基本はタメ語なのに、ときどき敬語になったためである。私の言語能力が低いだけかもしれないが、あきらかに言葉は乱れていた。

そんな乱れた言葉で話しかけられながらも、年上の女性は、年下の私に対して終始美しい敬語であった。敬語でも違和感なく女子会を楽しんでいたのである。そして、問題は、やっぱり私の言語能力の低さかもしれないと、悩む日々である。

カテゴリー:震災

タグ:ボランティア / 東日本大震災 / 和田直美