竹内オサム・西原麻里編著『マンガ文化 55のキーワード』を紹介いたします。本書はタイトルのとおり、おもに日本のマンガ文化について、メディアとしての歴史やジャンルの特徴、社会的問題、隣接領域との関係などを55のトピックにわけ、コンパクトに情報を凝縮して解説した本です。それぞれのジャンルのプロの方々が執筆に参加しているため、マンガ研究の最新の成果も知ることができます。
日本のマンガは、実際にはさまざまな読者がいるものの、現在でも基本的には男/女というジェンダーによってジャンルが区分されています。そのうえで、各ジャンル固有のコード(テーマ、キャラクター、表現の仕方など)にしたがって雑誌がつくられ流通しています。
そのような流通のあり様と、人びとや社会との関わりはどのようなものなのでしょうか。それぞれのトピックからは、マンガを取り巻く価値観のあり様が浮かび上がってきます。
本書の大きな特徴は、メディア史や表現論、ジャンル論・読者論といったマンガについてのオーソドックスなテーマだけでなく、マンガ産業、社会現象、事件などにも多くページを割いていることです。
日本ではひじょうに多くの人びとが日常的にマンガに接しており、いまや社会にすっかり浸透した娯楽メディアだといえるでしょう。しかし、その内実は単純な娯楽ではありません。いわゆる「メディア芸術」としてもてはやされる作品がある一方で、とくに性(ポルノグラフィ)に関する部分についての表現規制の問題がつねに巻き起こっています。また、商業出版されるマンガだけでなく、同人誌メディアの受容の中心地「コミックマーケット」、作品の舞台となった土地を訪れる「聖地巡礼」、他メディアとのメディアミックスなど、「マンガ」という言葉が含むものは多岐にわたっています。
「マンガ」とはそもそもどのようなメディアで、どのような文化を築いているのか。本書によって、マンガというメディアについて多角的な視野で捉えることができるのではないでしょうか。
一般のマンガファンだけでなく、卒業論文や修士論文でマンガを扱いたい学生・院生さん、授業などでマンガを取り上げる研究者にも最適な一冊です。
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