2009.08.24 Mon
イラストルポライター内澤旬子による屠畜(動物が肉になるまで)をめぐる旅。モンゴルで屠畜の現場に遭遇し、その光景に魅せられた著者は、東京、沖縄、韓国、モンゴル、バリ、エジプト、インド、アメリカの屠畜場へと出掛けていく。何をどうやって食べるかはまさしくその地の文化そのもの。動物を捌くことは場所によっては女の仕事だったり、男の仕事だったり。宗教的儀式と関わることもあれば、周知のとおり差別の問題もある。 著者による「まえがき」には、「そういえば、いつも肉を食べているのに、〈肉になるまで〉のことをまるで考えたことがなかった」とある。このイラストルポからは、屠畜の現場をほんとうに見たいと思っている、著者の好奇心とワクワク感が伝わってくる。そうでなければ屠畜の様子をこんなにていねいにイラストに描くことなどできない。
ところで本書の執筆動機には、屠畜に携わる人々に対する「差別」の問題への著者の強い関心がある。彼女はインドを取材し、日本では食肉に関係する場所だけでなく、皮革工場も訪ねている。とはいえ「差別」を真っ向から扱うことではなく、じっくりと屠畜の現場を観察し人々の話を聞き、その仕事に敬意を示すこと、それが著者による「差別」に対する反論である。
(lita)
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