要約:  フィッシュ・ファミリー財団(本部: 米国ボストン、ジャパンオフィス:東京虎ノ門ヒルズビジネスタワー CIC Tokyo内、創設者:厚子・東光・フィッシュ、ラリー・フィッシュ)は、移民・難民の背景を持つ方のための奨学金プログラム「JWLIスカラシップ」を設立した。JWLIスカラシップでは大学・専門学校入学予定者に、最大4年間の入学金・学費・生活費を含む返済義務なしの給付型奨学金を配布する。第1期となる2022年度奨学生として2名が決定し、その選定・そして入学後の支援についてはJWLIの他プログラム卒業生や卒業生が運営する団体(以下、アラムナイ団体)が参画する。 フィッシュ・ファミリー財団とは:  フィッシュ・ファミリー財団(本部: 米国ボストン、創設者:厚子・東光・フィッシュ、ラリー・フィッシュ)では、2006年にJapanese Women’s Leadership Initiativeを立ち上げ、主にソーシャルセクターで活躍する女性リーダーの育成や表彰を行う「JWLI」「CCJA(チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞)」「JWLI Bootcamp」の3つのプログラムを実施しています。3つのプログラムの卒業生は、現在100名を超えています。  女性の支援に加え、米国での22年間に渡る移民支援の経験とノウハウを持つフィッシュ・ファミリー財団は、国際社会の担い手であり才能あふれた若い移民難民の背景を持つ方のための奨学金プログラム「JWLIスカラシップ」を日本において創設します。彼女たち・彼らは多文化、多言語という背景から、今後の日本社会において重要な役割を担うと確信しています。 なぜ移民・難民の背景を持つ方への奨学金が必要なのか:  日本政府は2008年に「留学生30万人計画」(註1)を掲げて留学生受け入れを積極的に取り組み、2019年にその目標を1年前倒しで達成しました。一方で、既に日本で暮らす外国人や外国ルーツのある方への進学支援は非常に限られています。実際、難民の背景を持つ方を対象とした奨学金は UNHCR難民高等教育プログラム(註2)が主となりますが対象人数は20名程度に留まっています。  また、移民の背景を持つ(外国ルーツのある)方に対しても「高校中退率の高さ」と「高校卒業後の進路状況」が課題となっています(註3)。実際、日本語指導が必要な高校生は進学率が42.2%と、全高校生の71.1%から約30%も少ないというデータが出ています(註4)。 JWLI スカラシップとは:  このような背景に対し様々な支援活動・経験を有するJWLI卒業生らとの対話を通じ、「JWLIスカラシップ」の構想が生まれました。「JWLIスカラシップ」は大学・専門学校入学予定者に、最大4年間の入学金・学費・生活費を含む返済義務なしの給付型奨学金を提供します。JWLIの他プログラム卒業生やアラムナイ団体から紹介を受けた候補者の中から年間4名を上限に奨学生を決定しますが、この度秋入試枠にて2名の奨学生が決定しました。2022年度入学者については、冬入試枠で残り2名が選出される予定です。なお、一般公募は行っておらず、アルムナイからの推薦者のみとしています。  奨学金及び生活費の支給に加え、学生生活及び就職のサポートを行う伴走支援も提供します。支援においては、①同世代の移民同士のヨコのつながり ②ロールモデルと出会うタテのつながりが重要と考え(註5)、コミュニティ形成や、JWLI エコシステムのリソースや知見を活かしたキャリア形成のサポートにも取り組みます。 アラムナイ団体: ・ 海老原周子(一般社団法人kuriya) ・ 品川優(株式会社An-Nahal) ・ クレオニセ・西(Escola Nectar) ・ 渡部カンコロンゴ清花(NPO法人WELgee) 2022年奨学生 秋選考枠2名: J さん:東日本在住。出身国で迫害を受け、約10 年前に家族と来日。中学、高校でも部活や学内活動にて活躍。大学卒業後はグローバルな仕事をしたいという希望を持っている。自身のバックグラウンドを活かして外国籍の子どもたちのための多文化、多言語の学校を作りたいという夢もある。 K さん:東日本在住。約5 年前に家族と来日。出身国では女性は早く結婚し家庭に入るべきという考え方が一般的だが、自立した女性になりたいと進学を決意。大学ではプログラミング等IT 分野で学び、それを恵まれない人のためのツールとして活用したいと思っている。 註1 「留学生30万人計画」関係省庁会議 令和3年3月31日 資料1-3(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/koutou_wg/dai8/siryou1-3.pdf) 註2 UNHCR難民高等教育プログラム(Refugee Higher Education Program – RHEP)(https://rhep-japanforunhcr.org/ ) 註3 特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク発行情報誌『Mネット』217号「特集 外国にルーツを持つ若者の大学進学」12 神奈川県の NPO の支援現場からみる外国にルーツを持つ若者認定 NPO 法人多文化共生教育ネットワークかながわ(ME-net) 高橋 清樹著 註4 文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成30年度) 註5 特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク発行情報誌『M ネット』217 号「特集 外国にルーツを持つ若者の大学進学」16 大学で学ぶ移民の若者たち — 大学生活の中でつくられるヨコとタテのつながり— 中京大学 三浦 綾希子