2011.06.10 Fri

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この世の涯てまで、よろしく

訳者など:フレドゥン・キアンプール ()

出版社:東京創元社

 ピアニストのアルトゥアは、カフェでコーヒーを飲んでいた。  ん?  ちょっと待て。自分はもう死んでいるはずだ。何故まだ生きている?  そうではなく、また、生きている! それも五十年後の世界で。  幽霊としてよみがえったアルトゥアは、音大生たちと親しくなり彼らと暮らすことに。  でも、彼のモラルでは信じがたいことばかりが蔓延しているし、演奏の解釈も違うし、居心地がいいわけではない。とはいえ、ピアノの腕一本でサロンを渡り歩いていた身としては、寄生虫のような生き方は慣れっこ。  親友だったパヴェルもよみがえっていることを知る。一緒に殺されたはずなのに。でも、親友もよみがえったのは心強くあるのだが、ショパンをエロティックに解釈した演奏をした若きピアニストが殺され、彼らはもう一人がよみがえっているのを知る。戦時下、戦後と逃げ回って結構おいしい生活をしていた彼らと違い、戦い抜いて死んでいった彼が……。  これを機会に、様々な解釈のクラッシック演奏を聴くもよし。  時を超えて生き延びていく音楽のしたたかさを楽しむもよし。  音楽ミステリーです。  戦争の記憶がちゃんと描き込まれています。

カテゴリー:文学 エッセイ 評論 / 平和 戦争 / 芸術 / ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

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