2011.12.16 Fri
〜10月29日(土)、東京ウィメンズプラザホールにて行われた「連連影展FAV( Feminist Active documentary Video festa・※1)」主催の「女たちが女たちを女たちのために撮影した3.11後」という上映+トーク+歌のイベントに参加し、そこで知ったこと、感じたことをレポートします〜
==参加レポート No.1からつづく==
第2部は、岩手県山田町で3カ月間プロとして炊き出し活動をされた池田美佐子さん、NPO法人三陸自然環境新産業プラットフォームの今村正さん,山田の方々を勇気づける歌『ここに心が』を作詞作曲した高橋ふみかさんのトークで幕が開いた。
「なんでこんなにコンニャクいっぱい持ってきたの?ごぼうも!」と驚かれた――池田美佐子さん
食をつくるというのは要するに身体の源、元気を出すこと。お通じが出ない限りは元気にならない。10トントラックいっぱいの野菜を持って現地に入った。コンニャクで身体の中をきれいにして、根野菜を入れて排便を良くして、だんだん皆さんの顔色が良くなってきた。そして、〝酢の物が食べたい〟とか〝お肉が食べたくなった〟とか、わがままを言い始めたとき、「しめたな、身体が生きてきたな」と思った。
皮肉なことに牡蠣棚の下のヘドロが津波で全部なくなった――今村正さん
今までヘドロが1.2mあった。それをなくす闘いを私たちはずっと10年くらいやってきて、3〜4年かかる牡蠣の養殖を1年短縮できたところ、皮肉にも津波でヘドロがきれいになった。硫化水素が出なくなり、これから牡蠣は1年であがる。そこで皆さんに直接買っていただくルートをこしらえようとヒューマン基金をつくった。ご協力いただけたらありがたい。牡蠣の養殖は山田湾の漁業の1つの柱、牡蠣棚が復興し、牡蠣レストランができ、山田の女性たちが働く場も少しずつでき始めている。
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「そろそろ被災地の方々に〝声〟を出してほしい、〝声〟を返してほしい」と池田さんにたのまれ『ここに心が』という歌をつくった――高橋ふみかさん
自分自身は津波被害に遭っていないが,地元が被災したショックは大きかった。偶然出会った池田美佐子さんに「歌をつくってくれないか」とたのまれたが、この大きな被害をどう歌にしていいのかとまどい、初めて被災地に行ったときは言葉にできなかった。青少年の家に女性たちが書き込みをしたノートがあった。池田さんの提案で始まったそのノートには、地元の方言や好きなところ、思い出などが書かれていた。目に留まる言葉は〝戻りたい〟〝ここが好き〟。被災地をまわって、すごく一部にしか過ぎないが、その状況とそこにいる人たちの表情を詰め込んで一曲の歌にした。
♪かけこんだ青の下 あぁ、君がいる♪というフレーズに、この歌の気持ちを込めた。いろいろな青がある。一人ひとりの〝青〟をイメージして聴いてほしい。誰しもが生まれた場所があり、誰しもが愛する場所がある。地元に対する思いというのは今回被害にあった地域の方々、また被害を受けてない地域の方々全てに共通するものがある。
『歌った,踊った、泣いた、笑った〜岩手県山田町での一日〜』(制作 FAV)上映
トークに続いて『歌った,踊った、泣いた、笑った〜岩手県山田町での一日〜』(制作 FAV)が上映された。
この映像ができるきっかけは、山田町の炊き出しで池田美佐子さんと出会ったFAVのメンバーが、「池田さんがいかに頼もしい存在であったか」を仲間たちに伝えたこと。
池田さんの炊き出し最後の日となる7月17日、岩手県立陸中海岸青少年の家で避難所生活を送る田の浜地区の方々とFAVの皆さんは、ともに、食べて、歌って,踊って、泣いて、笑った。
〝連連影展〟のロゴ入りの揃いのエプロン。BGMに乗ってテンポよく具が盛られていく冷やし中華。鳥の唐揚げといなり寿司。ビンゴゲーム、腹話術、〝元少女合唱団〟のコーラス。一見すると地域のお祭りのようにも見える映像は、〝避難所〟のイメージを一新する。
プロとして山田町の炊き出しに参加していた池田美佐子さんは、NGOとの契約が終わっても被災地に残り、避難所の女性たちに炊き出しの心得を伝えた。
「〝頑張れ〟は要りません。普通に戻れるように一歩ずつ」という池田さんの言葉に山田町の方々から感謝の言葉が返る。
宴たけなわ、田の浜の人たちが、集まりがあると自然と始まる〝おかめひょっとこ踊り〟が飛び出し、♪♪さよ〜な〜ら、さよな〜ら〜♪♪とはるみ節から、エンディング曲『ここに心が』に連なる。〝おかめひょっとこ踊り〟の余韻とともに、暖かいものが胸にあふれ、会場は拍手で包まれた。
続いて、高橋ふみかさんのピアノの弾き語り。セカンドステージはFAVの皆さんと、山田町での1日をともに過ごしたSOSHIREN(※2)の皆さんもステージに上り、コーラスを披露。
最後に、会場の参加者からさまざまな意見や感想が寄せられ、連連影展の名前の通り、ここの場に集った人と人がつながるひとときとなった。

映像+トーク+歌+会場からの発言と、盛りだくさんな2時間だった。被災地の方々、支援する方々、撮影しているFAVの皆さんのつながりの渦に、見る人も巻きこんでいく力を感じた。これから、さまざまなところでこの映像が上映されることを願っています。
(写真・文/A-WAN すずき)
※ 1 「連連影展FAV(Feminist Active documentary Video festa)」とは、タブーや規制ばかりのメディアでは放送されないが、等身大にそして雄弁に語りかけてくる映像をフェミニストの視点であつめた神出鬼没な映画祭
※2 『ここに心が』をお聴きいただけます。『ここに心が』のCDは、NPO法人三陸自然環境新産業プラットフォーム(ヒューマン基金)から販売中です。売り上げは地元支援(牡蠣棚再建)などに使われます。
※3 「SOSHIREN」とは、「刑法・堕胎罪の撤廃を求めているグループ。 1982年の「優生保護法」改悪阻止を訴えてできたため「ソシレン」という。「女(わたし)のからだから合宿」の企画等もしている。
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